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□影で
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「次の新曲は、ダンスがメインだ。JUMPとしてはキレのあるダンスを売りにしてるから各自で必ず練習をするように。」






新曲のダンスレッスンが終わった。






長時間に及ぶレッスンで、みんなクタクタ。





今回はいつもとは違い、複雑な部分が多いので結構苦戦している。






サビの部分も、普段だったらファンの人と一緒に踊れるようにと簡単な振り付けになっているけれど、そうではなく、ファンの人に僕らのかっこよさを伝えるというのが新曲のモットーなのでサビの部分も難しい。






僕は比較的、覚えるのは速いので、もう既になんとなくは頭に入った。





時刻は夜の十一時を回っている。




「涼介、」




水を飲んでいた涼介に話しかけた。





「ん?」




「一緒に帰ろうよ。」




もう他のメンバーは帰ってしまった。





みんなそれぞれ仕事も詰まってて、忙しい。





涼介だって忙しいはずなのに、





「俺もう少しここにいるわ。疲れたし動けねー。」





そう言って笑っている。





「そっか、わかった。また明日ね。」





僕はマネージャーと涼介を置いてスタジオを出た。





車に乗り込んだところで、





「あ、スマホ忘れた。ちょっと取ってきます。」





マネージャーにそう告げて、さっきのスタジオまで戻った。





もう廊下は人が少なくて、少し怖い。





スタジオに着くと、電気がまだついていて、僕らの新曲が流れている。





涼介が消し忘れたのかな?




そう思い、そっとドアを開けた。





そこには未だに踊り続ける涼介の姿があった。





サビの部分を何回も何回も流しては、やり直す。





鏡に写る涼介の顔は真剣そのものだった。





今回の新曲のダンスレッスンのとき、確かにいつもより涼介がついてこれてない気がした。





疲れるんだな、としか僕は思わなかったけど、きっと涼介自身は、自分が許せなかったのだろう。





明日も朝早くから撮影があるのに。





この涼介の努力を無駄にしてはいけないと思い、僕はスマホを取らずにそのまま静かにマネージャーの元へ戻った。





「スマホあった?」





「はい。ポケットに入ってました。」





マネージャーにそう聞かれたので、適当な嘘をつき、家に帰る。






そして次の日、再びメンバーと顔を合わせた。





「あ、知念おはよ。お前昨日スマホ忘れてたぞ。」




いつもと変わらない笑顔で涼介が僕の元へ寄ってきた。





そして僕にスマホを渡してくれた。






「やっぱり。ないと思ってた。ありがとう。」





その笑顔の裏には、人一倍の努力があること。




僕は知ってるよ。





涼介はすごいな。






いつまで経っても涼介は僕の憧れの人だ。
 

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