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□女子の言葉はΨ強なり
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僕の名は斉木楠雄。超能力者である。

本日は純喫茶魔美にて、ティータイムを満喫している。






ここのコーヒーゼリーは美味い。





店の客もそれほどいなくて、とてもくつろぎやすい。僕の行き付けの店だ。






だが、今日はそれほどくつろげない。






「ここのコーヒーって美味しいね」





照橋さんとばったり会い、流れ的にお茶することになってしまったのだ。






というわけで、回想に行かせてもらう。







遡ること三十分前。






僕はコーヒーゼリーを堪能しに、例の店を目指していた。






そんな時。





『あれ?斉木くん。偶然だね』





はいどーん。ここで鉢合わせたのだ。





《こんなとこで斉木に会えるなんてラッキー!…じゃなくてラッキーね斉木!》




ラッキーだとは思わない。むしろアンラッキーだよ照橋さん。





『よかったらお茶でもどうかな?斉木くんのオススメの店に行きたいなー』




《さぁ、これでどうよ!斉木、今日こそおっふるのよ!!》




うん、おっふるってなんだ。ワッフルの親戚か何かかよ。





照橋さんは上目遣いを駆使して、僕の反応を待った。そんな顔してもおっふはしないぞ。





『あ、今日は甘いものが食べたいって思ってるの。ね?一緒にどう?』




まあ、行くのは喫茶店だし別にいいか。とは思う。




彼女といて目立たないかだけが心配だが、あそこならまあ平気だろう。





そして、現在に至る。






僕らはコーヒーゼリーを二つ注文した。





「お待たせしましたー…あっ!」





そういえば、目良さんのバイト先はここだったな。







「斉木くん、今日は照橋さんと一緒なんだー!」






「目良さんここでバイトしてたんだね」






「うん!あ、いつもコレ落としてくれてマジ感謝!」




同じボケにはツッコまないよ目良さん。






「えっ、斉木くんってここの常連さん?」





そして今それを聞くか。とりあえず一回頷いておこう。





「そ、そうなんだ〜」



《じゃあよく目良さんが話してる同じ学校の常連客って斉木のこと?二人はよく顔を合わせてることになるわね。…え、私より可能性あるじゃない!嘘でしょ?この私が負けるっていうの?っていうかなんで嫉妬してるの!?別にそれでも平気じゃない!あぁもう!何これ!!》





これは好感度下落フラグか。ついに来たのか、この時が。





目良さんと顔を合わせることは多いが、大体彼女はバイト中なので、話しかけることはない。





しかし、話しかけられることはある。それを話せば、好感度は下がるだろう。





「斉木くんはね、毎度毎度コーヒーゼリーを食べてってくれるの!あ、もしかしたら斉木くん、照橋さんにもオススメを食べてもらおうと思ったんじゃないかな」





え。




「へー!道理でこのゼリー美味しいと思ったよー!」




《よかった…でもなくて、よかったわね斉木!私にオススメを食べてもらうことなんて滅多にないわよ!》




おっふ。嘘だろ。





まさか目良さんが余計なことを言うとは…。






《照橋さんって本当に斉木くんのこと好きだなぁ》




その目良さんは満足そうだし。しかも今の発言で下がりかけてた好感度も元通り。むしろ上がってる。






女の言葉は、謎のパワーを持っている。





僕はそれに観念し、コーヒーゼリーの最後の一口を頬張った。
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