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□Valentine's Trouble
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2月14日。



たちまち校舎内がチョコの匂いに包まれる日だ。




僕個人としては、この日は嫌いじゃない。




何故なら、合法かつお得にチョコを食せるからである。




部活が一緒ということで、夢原さんや万城乃から義理チョコをもらう。




万城乃のは普通に流して固めただけだが、らしくない可愛いデコレーションをほどこしてある。(主に粒チョコで)




夢原さんのは、手作りなのかどうかわからない。とてもよくできたトリュフチョコが小さな箱に入っていた。




お節介ながら、軽くエールを送っておいた。




意を決して海藤に本命を渡してくれれば、僕としては嬉しい。こちらに好意が向かないだろうから。





ゆっくり去ってく万城乃と赤くなる夢原さんをよそに、チョコを口に入れた。



うん、どちらも悪くない。



続いて、相卜からの本命チョコを見る。




これは…熱烈というかなんというか。





ハート型の大きなチョコに『Kyusuo♡LOVE』とチョコペンとは思えないほど派手なデコレーション。あ、ローマ字違う。




兎にも角にも食べづらいので、先に全部一口サイズにしてから口にした。




…しょっぱ。どこで塩入れたんだおい。





《あっ、くすお!アタシのチョコどうだった!?ゲロウマっしょ!?》



こちらを見ている相卜が嬉しそうかつ誇らしげに言う。(テレパシーで)



『ない。それは断じてありえない』




塩が入っているためだと正直に言ったため、テレパシーがうるさいだけで済んだ。耳は痛いが、後で面倒なことになるよりはいい。




さて、問題はこの盛大な美のオーラをまとった彼女。当然照橋さんのことだ。




彼女の視線が痛いほどに熱を持っている。




《知予は本命がいるからいいとして、何それ以外の女子のチョコ受け取ってんのよ斉木くにお!しかも相卜さんのは明らかに告ってるし!さらに言えば知らない女子入ってきてるし!まあ私の方が何億倍も完璧な美少女なのに変わりはないけど、ほかの受けとんのやめない!?》




心の声、謎の嫉妬だらけな上やたら長いな。そして僕は『楠雄』だ。くにおじゃない。




問題はもう一つ。これは僕じゃなくて照橋さんの問題なのだが。




「「「「照橋さん!俺にチョコをお恵みください!!」」」」





そう、この男性陣である。さらに、



「心美先パイ!あの人達なんかほっといて私とイチャイチャしてくだサイ!!」




照橋さんラブな梨歩田まで加わっているため、余計に僕の所へ行けなさそうだ。




僕からすれば、グッジョブだ。彼女にチョコなんてもらったら、身の安全が保証できないからな。




さて、暇つぶしにいつもの野郎どもを見てみるか。




海藤はモテてるな。あの見た目なら納得だ。




そう思っていると、夢原さんが挙動不審になりつつチョコを渡しているのが見えた。




《女の子からチョコ!?だ…ダークリユニオンとの戦いに役立つことはないだろうが、受け取ってやろう》



嬉しいなら素直に受け取っとけよ漆黒の翼。




「おうあいぼー!友情の証にラーメン食いに行こうぜー」




燃堂に関してはいつも通りだ。ラーメンは気分じゃないから行かないが。




「ついでにチョコ作ったんだぜ。食わねえか?おっ?」




そう言って差し出された不格好な包みには、綺麗なチョコマフィンが入っていた。




見た目に衝撃を受けたので、先に食べてみた。





うん、美味い。やはりこの男はやる時はやるんだな。(燃堂は料理上手)




灰呂は、この前(原作参照)のバレンタインで義理チョコ世話チョコ友チョコの山を貰っていたな。今年もそんな感じか。




まあ今回はチョコ持ってトレーニングしてるけど。



才虎は照橋さんの元にいた。他を押し退けて、また偉そうに顎を出している。




「おい心美。チョコは俺だけでいいだろう。何故貧乏人共に渡すなんて考えるのだ?」




普通に「チョコください」と言えないのかコイツ。




ため息をついた途端、照橋さんの方に動きがあった。
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