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□封じる。
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鮮やかな雨が降る中、「おめでとう」が飛び交っている。
花婿は、真っ白なタキシードを着ていた。アクセントに花嫁とは色違いのピンクの花が胸元で輝いている。
花嫁は純白のミニドレスを纏っていると同時に様々なものを身につけていた。
普段は出てこない母親のネックレスと少し古めのイヤリング、ピカピカの白いローヒール、そして青いブーケ。サムシングフォーだ。
その姿に見とれてると、花婿が不意に
彼女の頬に唇を寄せ、見せつけるかのようにキスをした。
今日で、めぐみたちと出会ってから六年立つ。
そんな記念すべき日の私は、あの時は長かった髪をバッサリ切って、メガネをかけたから、まだ相手は私に気づいてない。
名刺に書かれてる名前だって、『白雪ひめ』でも『ヒメルダ・ウインドウ・キュアクイーン・オブ・ザ・ブルースカイ』でもなく、人気モデルとしての芸名『空野姫子』になっている。
「ご結婚おめでとうございます、誠司さん」
「ありがとう、姫子さん」
そう言って微笑んだ誠司は、心底嬉しそう。
どんなカタチでも、彼の笑顔の隣に居られたら嬉しい。
でも、誠司の思い出の中に、私は生きてるのかな。
忘れられちゃったかな。
それだけを確かめたい。
二人きりで話しているとその思いが強くなる。
「あの…ちょっとだけよろしいですか…?」
「どうしました?急に改まって」
きょとんとする誠司は、本当に昔と変わらない。やっぱり好きだなぁ。
「えっと…私のことわかる?」
あの時の口調ではっきりと聞いたら、誠司は何回か瞬き、軽く首を傾げてた。
なので、メガネを外してその目を真っ直ぐ見る。
「――…久しぶり、誠司」
しばらくして、彼は思い切り目を見開いた。