スクイーズ篇

□コーヒーとミルク
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 任務から引き揚げて、ちよを送り届けた後、蟬ヶ沢は再び公園に来た。誰も来ないこの空間は一人で考えるには最適なのだ。
 ベンチに腰掛けながら、自身の言葉を振り返る。
「ちよはちよのままがいい。いて欲しいのよ」
ちよの前では本音でいるのが多い、ましてや接触していた時ならば嘘なんてすぐにばれてしまうだろう。しかし今回は本音が過ぎた。
 自分というのを振り分けて、振る舞っている。本来の自分はどちらなのだろう。自問するまでもない。答えは分かっているのだ。分かってはいても、自分と言う人格は全て蟬ヶ沢だという訳では無い。スクイーズというには自分の行っていることに迷いがあるのも確かだ。
「私も我儘ね」
 割り切ってしまえば楽だったろうに。割り切らせたくなかったのはきっと変わってしまう彼女を見たくなかったのかもしれない。淡々と敵を処理していくさまなんて見たくないと。汚れ仕事は自分だけでいい。

 蟬ヶ沢は数時間前にちよから貰ったカフェオレを飲む。ぬるめから冷えた状態になっていたが、蟬ヶ沢は構わずに飲み干す。やたら甘ったるくて、コーヒー特有の苦みが控えめ。こんな飲み物を任務中に飲んでは気が緩んでしまいそうだ。 
「これ以上甘ったるくなったら困るわね」
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