スクイーズ篇 二門

□鉢合わせ
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 帰ったのはほぼ夜明けだ。任務を終えた今日が休日なのは良かったと思う。事前に両親の意識は逸らしているのでこのまま帰っても、別のところで休んでも二人に気づかれることはない。
 ふらふらとした足取りで自宅までの道をとぼとぼと小型のバイクを引いて行く。
 ネットカフェや宿泊施設があればいいが、この通りではビルの方が多く、地域性としては休むとは程遠い場所ばかりだ。
 この近くにはNPスクールのビルがあると聞く、少し先にはスクール生徒の一人を管理する合成人間が働く弁護事務所もあったはずだ。さらに移動すれば、ちよの仕事場もといアルバイト先もある。別の方向に進めば、朝の雇い主が住む家がある。
「………………………」
 一歩だけ別の方向に歩きかけ、すぐに戻して歩く。
 もう百メートルほど進めばカフェかある。眠るとまではいかないが、珈琲など飲めば少しは癒されるはずだ。
 最新の商品に少しばかり楽しみに歩くと、見知った人物が出てきた。
 その人物も同じタイミングでちよを見たらしく、あくび混じりに手を振って来た。
「おはよ不良少女」
「おはよ社畜中年」
 中年はちよに手振りでそのバイクを貸せと話し、大人しく渡す。そのまま事務所の駐車場に停められ、今度はちよ本人がずるずると引かれる。
 彼に連られるまま彼の所有する車に乗り込まれる。眠たげでもきざったらしくエスコートするつもりらしく、車を開けて手で案内人され、ちよは断るする気力もないので素直に受ける。
 発車する前に大きなあくびをする。
「ご両親心配してない?」
「気はそらしてるから、まず大丈夫。一応友達家にそのまま泊まるって言ったし」
「任務のことも話してくれなかった上に、ご両親にも嘘付くんだから、ほんと悪い子」
「悪い子でもいいから、もう寝ていい?」
「このまま車の中で眠るつもり?」
「じゃあ、セミさんの家で寝たい」
 急ブレーキがかかり、窓ガラスに額が当たるが眠気のせいもありぼんやりと痛いとおもくらいにか感じない。
「りびんぐにぽーんってほっといていいから」
「………」
「もしかしてだれかいる?」
「いない……けど」
「けってい−」
 任務のこともアルバイトのことも色々と知ってる彼は頼りになる。
 ちらっと意識が落ちる前に彼の様子を見る。朝焼けで眩しそうにしながら、空と同じ色をしていた。
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