スクイーズ篇

□建前と本音
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 スクイーズは視線で見まわし、気配も全て感じ取れるだけ察知し、少なくともこの場にイほかの構成員がいないことを確かめる。
どうせ他の者はいないし、間違いなく聞かれなくない人物には聞かれることがなければ、今回だけは話してもいいだろう。心の中で今だけだと言い聞かせ、諦めて蟬ヶ沢としての口調で話し始める。
「……仕方ないわね」
まるで目当てのアイドルを発見したかのようにちよの目が輝いた。スクイーズはちよを睨むが、効果は雀の涙ほども効いていない様だ。続けて指示の内容を話す。
「これから私たちが向かうのはアイスクリーム店のイベントよ」
「ああ、蟬ヶ沢卓としての仕事か」
「そうよ。でも、それは表向きね。指令は教えられないけど、あなたは私の助手として来てもらうの。正直いなくてもいいわ。来たい?」
「アイス食べたい」
「正直でよろしい。でも、そのアイスはスプーキー・Eが実験で入れているのが入っているから駄目よ。食べてはいけない指示はきていないけども、食べてもいいと言う許可もないもの」
ちよが統和機構としての構成員で指令らしい指令は実の所一つしかない。スクイーズの付添いなのだ。彼の付添いということはつまり、
「……実験者の始末が今回の指令なのね」
ただ、彼が始末しているのを見ていろと言うのだ。
 苦笑いするちよに、心苦しそうに肯定する。
「そうだ」
「おねえ」
指摘され、スクイーズは眉間に皺を寄せていたが、すぐに戻した。
「………そうよ。だから来なくてもいい指令なのよ 」
「ふふっ 」
「なんで笑うのよ」
「いや?ふふっ。いいよ、来なくてもいい指令なら私は行かないで、仕事に使えそうな素材の写真でも撮ってくるから」
指令で、ちよがスクイーズに付き添うか否かは指令しだいで変わる。今回は付添いの必要は選べるようだ。今回の様に選べるときだと、必ずスクイーズはちよを連れて行きたがらない。何が何でも連れて行かない。最初のころは気絶させてまで止めたのだ。
「やらなくてもいいわよ。帰りにアイスでも買ってくるから、大人しく待ってなさい」
「はいはい。行ってらっしゃい」
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