スクイーズ篇

□建前と本音
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 スクイーズの帰りを待つ間、画像をチェックする。手伝いの一つで、完成品として出来上がった者を第三者の視点で確認してするというのがある。自分では完成と思いきや思わぬところで粗が見つかりクライアントに苦情が来ることがあるのだ。特に、巨大なものに印刷するとなると、粗が見つかってはいけない。
画面を遠距離で見たり、通常の距離で見たりすること三十分、目の休憩の為に作業を中断すると、通信に九連内朱巳から連絡が来た。
出ると、彼女は今事務所の入り口におり、開けて欲しいとのこと。出迎え、さきほどまで作業をしていた部屋に連れてくる。
朱巳は部屋にスクイーズがいないのを見ると、溜め息を付いた。
「あれ?あいつってちよの監視役になったのよね。監視役がいなくなって大丈夫なの?」
ちよはデスクの上にあるピエロの写真を指で指して言う。
「アイス買ってくるだって」
「私ならそのアイスは食べないわ」
「私が頼んだのは食べても大丈夫なもの」
「ちよもえげつないわね。しばらくはアイスが食べなくなくなりそうなものを見た後で、アイスを買わせるとか」
「アイスに罪はないからいいの。食べる人間の責任だもの」
「それって、あのアイスを作っている奴への皮肉?」
「いいえ、違うわ。でも本音を話せば、その実験としてばらまかれる前のアイスを食べたかったな。特殊な効果があるとっていっても、作っている本人は好きで作っているんでしょう?」
「そうらしいわね。リピーターがいたから、ばらまくには丁度いいってことで入れられたそうよ」
「アイス全部にそのばらまきのアレが入っているかな?」
そこまでしてアイスを食べたいのかと朱巳は呆れる。
「スクイーズに止められるわよ」
「散々来なくてもいいって言われたから行かないよ。その代わりに入ってないアイスを頼んだけどね」
「羨ましいわ。あとで克己と食べに行こうかな」
「じゃあ、おすすめのアイス屋さん教える」
「それ、スクイーズと行ったことある店?」
「ない。連れて行くと、通報されるから止めた」
けらけらと朱巳は笑う。冗談ではないのにとつぶやき、ちよは口を尖らせる。
一度、彼がプロデュースしている女性がターゲットのお店に来たことがある。スクイーズと暫く話していたら、見回りをしていた警察官に職質にあったことがあるのだ。あれは大笑いしたくなるほどのことだが、当の職質を受けた本人は酷くショックを受けたそうで、それを思い出すと、連れだせるところは吟味して選んでいる。
ふと思い出し、朱巳に聞いてみる。
「そういえば、スクイーズの口調って、蟬ヶ沢卓としてだけあの口調なの?」
「そうね。私は基本的にそっちの口調のときは知らないから解らない。あんたは構成員前から知り合いだから、そっちがデフォだっけ?」
「そ。それで、あのスクイーズとしての口調がどうにも慣れなくって、さっき指令を言う時でもおねえ口調で言ってお願いした」
「その光景是非とも生で見てみたかったわ」
彼女もスクイーズを以前から知っているが、蟬ヶ沢卓としての彼を見たことが無いのだ。ましてやおねえ口調の彼など考えれられない為、俄然興味が強くなる。
「たぶん、このまま待てば見れるんじゃない?」

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