スクイーズ篇

□コーヒーとミルク
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 公園を歩いて人通りが多い道につながる出入り口に着く。公園から出た先で男女が腕を組んで歩いているが、公園には一向に来る気配がない。
 ちよとスクイーズは歩きを止めないので、出入口からはどんどん離れ行き再び人気がなくなる。人が完全に見えなくなるとスクイーズは安心したように溜め息を付いた。
「この時間にも関わらず人がいなくてよかったと思う」
「ここはツイン・シティから結構離れているからね。衰えた地域には近寄りたくないんでしょ。公園に人がいれば栄えている証拠ってわけでもないけどさ。人が居なくて調査しやすくていいじゃない。」
 この公園の近くには立体駐車場があるが、ツイン・シティという名の大型百貨店や専門店の駐車場がある為、そちらの方が利用されていて、通行人以外はここにたむろすることはない。
 二人は公園の中心地の銅像前に着く。そこそこ広い公園内で一番目立つものだが、そこには誰もいない。園内を歩く中で二人は誰ともすれ違わなかった。出入口に人がいたのを見ると誰も入りたがらないのではないかと思ってしまう。
「普通はちょっと人の気配があるところで落ち合うものだと思っていたんだけど、大人の密会は堂々と会うものなのかしら。そこんところはどうなの、社会人代表」
「生憎、私にはそういった人はいなくてね。そういう貴女はどうなんだ、生徒代表」
「私は密会する以前にいないって。そういった相手を作る時間がないからね。そこの中年と過ごしてばっかだから」
そこの中年――スクイーズは顔をこちらに一切向けず、どこかを見ている。
「…………」
「あのー、一応……これぼけたつもりなんだけど」
「………ああ」
彼は振り向かず、とても気まずそうに答える。気のせいか汗もかいているように見えた。
「……すまない」
「なんで謝るのよ。別に不満があって言ったわけじゃないのよ。そりゃ、セミさんと一緒に帰るのが多いってのは事実だけど、だから彼氏が出来ないって訳じゃないし」
そうじゃないんだがと呟き、スクイーズが咳払いをする。
「彼氏と過ごせるような時間は取れるようにする。それと、スクイーズだ」
「別にいいって。彼氏なんていらない。って、今のはセミさんでも良いじゃない」
「今は任務中だ」
ちよは軽く溜め息を付く。
「言葉遣いといい、徹底しているわね」
「形だけだ」
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