スクイーズ篇

□コーヒーとミルク
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 公園を通り抜け、立体駐車場前の入り口に着く。
 何年か前、二人の上司たるレインが受けた任務で起きた現象の場所だ。殺意に反応し、向けた対象を攻撃する動物がいたのだ。その動物を作り替えた者は既に処理はされたが、残党の確認及び処理を任されたのだ。
 何年も前の事件を掘り起こしたのにも理由はある、今二人が追っているもの――ドッペルゲンガーと呼んでいる者と、作り替えられた動物に共通のものがあるのではないかと言われたのだ。
 立体駐車場は公園と同様に人気も無く、それどころか車もろく駐車されていない。車の下などに潜んでいることを想定し、車から離れて探索をしていく。
 ちよはわずかに能力で探知をしつつ車に近づいて探そうとするが、スクイーズが制止し、先に見てくる。
「一応言っておくけど、そこの車には生き物はいないよ」
「ゾンビのようなものなら貴女だって相手が動いていない限り分からないだろう?私が先に見た方がいい」
ちよはスクイーズのジャケットの裾を引っ張る。
「MPLSだったらセミさんは一発でアウトでしょ。ほらどいて、なんか危なくなったら私を引っ張ればいいじゃない」
飄々を言うちよの言葉にスクイーズは眉間を押さえた。
「あのな……大根じゃないんだぞ」
 上階へ上ると、レインが遭遇したゾンビ犬の現場に着いた。現場に着いてもこれまで来た道と同じように無人で車もない。ホームレスが使っていたのか、空の段ボールが転がっているくらいだ。
「以前レインが報告したゾンビ犬みたいなのが発見されたのはここってわけね」
「その犬、ペットだとしたら飼い主が悲しむだろうな」
犬がいたと思しき場所を見て、彼は目を細める。
「悲観的なのは良くないよ。セミさん」
「“スクイーズ”」
「……はいはい。ま、こんなところで犠牲になっていると思うよりも、どこかで生き延びていると思っておいた方がいいよ」
どこかで生き延びているのところでスクイーズはちよを見る。
「……飼ったことがあるのか」
「昔、ね」
「……生き延びているさ。君が飼っていたペットならきっと強い」
スクイーズの根拠のない自信にちよはくすくす笑う。
「そうね。そう思っているわ」
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