スクイーズ篇

□コーヒーとミルク
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 結局、駐車場には何もゾンビ犬なんてものはおらず、残党もいないと判断した。
 駐車場を後にし、公園に戻る。自動販売機のあるベンチで休むことにした。
二人は自販機で飲み物を選ぶ。彼が自動販売機から出したのはブラックコーヒーだった。
 ちよは首をかしげた。普段の彼ならばブラックを好んで飲むことはしないのだ。
「今日はブラックなの?」
「今は、だな」
スクイーズは缶を開けると一気に飲む。あからさまに苦いと顔に出ていた。あまりにも素直すぎる反応にちよは苦笑いする。
「苦いのが苦手ならいつもみたいにミルク入りを選べばよかったじゃない」
「後でそっちを飲むさ」
ちよはいつもと同じようにカフェオレを選ぶ。
「それもまたスクイーズとしての行動?」
「かもな。もう昔からやっていることだから何でそれをしているのかも忘れてしまったさ」
「ブラックスクイーズに、ミルクセミさんって感じね」
「ちょっと!変な名前つけないでちょうだい!」
(あーあ、いつもの喋りが戻ってきちゃった)
今がスクイーズであることに固執する割にはあっさりと蝉ヶ沢としての振る舞いが出ていることにちよは頬を緩める。
「不味そう」
「そんなことないわよ」
スクイーズはムキになって答える。
ちよは くくっと笑いを堪えながら、言う。
「”今“なら、ブラックよりもミルクじゃない、“セミさん”?」
私は自動販売機から取り出したカフェオレを彼に渡す。
 彼は口調が戻ってしまったことに気づいて、悔しそうに呻く。
「今だけミルクスクイーズになるってのはどう?」
「そんな名前だとミスを犯しそうだな」
「いっつもブラックだと胃を痛めてしまうから、たまには」
スクイーズはようやくちよが渡したカフェオレを貰う。
「気のせいか貴女といるときは、いつもミルクみたいに手緩くなる気がするわ」
「さしずめ私はコーヒー?」
「むしろ砂糖よ。馬鹿みたいに甘ったるい」

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