スクイーズ篇

□コーヒーとミルク
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 休憩を終えて、公園ももう一度見ていくことになった。行とは違うルートで、道が細く、雑草も多い、パッと見では道に見えないところだ。
 足元を何かが引っかかった。
 スクイーズが「ん?」と足元を見ようとするとざさりと茂みから何かが出てきた。
「………――――!」
 スクイーズはタックルに近い勢いで抱き付かれ、勢いに負けて倒れる。
茂みから飛び出してきたのは、猫だった。鳴き声はほぼなく、呼吸なのか肺からただ空気がもれているだけなのか、ひゅーひゅーとした音だけを出している。猫は倒れたスクイーズとちよの一メートル手前でわずかに揺れつつ空中に止まっている。足をじたばたさせているので、空気による固定でも、空間操作による停止でもない様だ。
 スクイーズの上に乗る彼女は震えている。
「スクイーズ……」
苦しそうに呻きながら呼ぶ。彼女が能力を使っているのだ。普段スクイーズの許可がない限りは使用を禁止させているのにもかかわらず。
「馬鹿!私が許可を出すまで、能力を使うなってあれほど」
「攻撃防げなかったようじゃあ、その指示には従えない。でさ、申し訳ないけど、能力使って吹っ飛ばしてくれないかな」 
「生き物なら」
「私はこいつらを押さえることは出来ても、こいつらを倒せない。こいつらはただの物体になっている」
「分かった」
三秒ほど充填をする。充填の間、少しだけ目の前のこの猫たちについて考えた。この猫たちの中にちよが飼っていた猫がいるのだろうかと。スクイーズを押し倒す瞬間、彼女は何かを叫んでいた。スクイーズの名でもない。聞いたことが無い名を。
 充填が完了し、肺を発射の姿勢に変える。スクイーズの上に覆い被さった彼女にも今発射されるのが解ったのだろう。
 発射の瞬間、彼女が何か言ったように聞こえた。
 発射された衝撃波そのものは着弾するまで音はしない。モスキート音のような高音で、聞こえたとしたら相手にしか聞こえず、聞こえてもただでは済まない。
 宙に浮かんだ猫たちは瞬時にばらばらになり、肉と骨と血をばらまく。猫たちの真下にいたスクイーズ達には一切掛からない。彼女が方向を変えているのだろう。自分たちの上空には透明な傘があるように血肉は脇を流れていく。
 落ち終えるのには時間はかからなかった。周囲がばらばらの血肉なのに匂いがまったく感じられない。匂いも別の方向へ流しているらしい。
「終わったぞ」
「うん」
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