スクイーズ篇

□帰り道
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 彼と私が未だに話したり、どこかに出かけたりするのは気とか趣味が会う訳では無いと思う。勿論、好みや趣味嗜好の話はよくするのだが、一番の目的は違うことのように思える。会った当初に言われた新作デザインを見せてくれという言葉も未だに言わない。その代わり、会う度に聞かれることがある。
「変な人にあったとかはない?」
 日常会話の中で必ずと言ってもいいほど入れてくる。私は冗談交じりで貴方以上の変人はいないわと答える。彼もまた冗談半分で怒るが、それ以上に何もないことに安心しているようなのだ。
 奇妙な質問を終えたとは、割とただのお出掛けである。テーマや場所を決めて、写真を撮ったり、絵を描いたり、本屋でいい資料を買うこともある。会うことが頻繁なこともあって、ドライブだけというのも少なくない。会話の数は通常の人と比べれば多くはないが、他の人と話す時よりは会話は弾む方である。年齢を考えれば世代との違いで会話が難しいらしいが、彼に関しては世代らしいものが感じられず、お互い会話に困ることはない。

 今日は何をしようか。
 本屋によるのだから、そのあとに買った本を一緒に読むのもいいだろう。トリスタンではまた新作の飲み物が出たはずだ。それのチェックとして行くのもいいだろう。
 放課後が楽しみで、今すぐにでも行きたい。
 教員の説明の声や、他の生徒の雑談にかき消されるほどの小さい鼻歌を歌いながらテキストを進めた。

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