スクイーズ篇

□身染めの褐葉
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04.お手を拝借

 お互いに着替えを終え、外に出ようと玄関を出る。蟬ヶ沢と話しながらだったせいか、足元に段差にあることに気付かず、躓いてしまう。
 ぐらりとふらつく体の傾きにちよは焦るが、能力で逆に重力を傾けさせる思考する間もなく落下は止まる。疑問は腕の感触で既に答えは分かっていたが、同時に理解するのに時間がかかった。
「大丈夫?」
 蟬ヶ沢がちよの腕を掴み、落下を防いだのだ。
「ありがとう」
 ちよは蟬ヶ沢に引っ張られながらも体勢を持ち直す。
 自身の足元を見る。浴衣姿に合わせて、下駄を履いたが、やや歩くには厳しい道に見えた。この町は舗装された道路もあるが川沿いの歩道は道路の色が異なり、さらに石が埋め込まれている。
 ちらっとちよの腕を掴んでいた蟬ヶ沢の手を見る。そろりそろりと手を握ろうとして、一瞬止まり、袖を掴む。
 ん?と蟬ヶ沢は首を傾げる。
「どうしたの?」
「紅葉ってこの川の先でいいんだよね」
「そうよ。…………」
 蟬ヶ沢がくいくいっと、掴まれた袖から覗かせる指を動かす。
 見上げて蟬ヶ沢を見るとにっこりと笑っている。
 握った裾を放すと跡がついて皺になっている。引き伸ばそうとすると、その手は捕まえられ、行動を妨げられた。
 恋人繋ぎではないのは見られる中での細やかな配慮だろうが、がっしりと握る強さは放す気は全くないと言っている。
 顔が熱く、とてもじゃないが他の人の視線なんて気にしていられる余裕はなかった。
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