スクイーズ篇 二門

□いつももうちょっとぎゅってするじゃん
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 ちよから誘導され、再びベッドに入る。ちよがねぼけても不満な顔なのは分かる。乗りたいアトラクションにお父さんと行きたがる娘はこんな顔をしていそうだ。
「これじゃせみさんのこどもみたい……」
「実の子供くらい大事よ」
 むくれた顔はやはり子供じみているが、この行動をする時はかなり参っている時だ。甘えてくれるのは嬉しく思う反面、心配で仕方ない。
 空はやや明るくなってきたが、本格的に朝になるのはもう少し時間がかかる。二度寝をしてもいいが、目の前の状態に対して放置も出来ない。
 ちよは顔をこちらに向けているが、ずっと瞼は閉じている。
「ちよ、起きてる?」
「ん」
 さきほどから寝ぼけている状態なのがより眠りに落ちている。
 聞きたいことは沢山ある。聞きたいが、今そんなことを話させるのも忍びない。
「今日は何がしたい?」
 返事はない。寝ているのかと思ったが、微かに瞼が開いて唇を少し噛んでいる。
 一体何が不満なのかしら。じっと様子を見る。数秒にらめっこし、ちよが顔を蟬ヶ沢にうずめてきた。
「このまま」
 二度寝なら賛成ね。安心して眠りにつける。
 背中に手を回そうとした瞬間、ぼそりと聞こえた。
「いつももうちょっとぎゅってするじゃん」
「…………」
 手は布団を引っ張り、ちよの肩までしっかり覆う。覆ったのを確認するために肩をぽんぽん叩く。
 彼女は不服そうに蟬ヶ沢の背中に手を回し、一足先に二度寝に入った。
 二度か三度、ちよが完全に眠りについたのを確認してお返しして蟬ヶ沢も二度寝した。
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