スクイーズ篇 二門

□バスタイム2
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 ちよとスクイーズの上司たるレインを送った次はちよの送迎だ。
 レインの姿が完全に見えなくなったのを確認すると大きくため息をついた。あまりにも大げさだったのか、それを見たちよが苦笑いした。
「セミさんは朱巳と会った後って、いつもため息ついてるね」
 スクイーズとして振る舞う状態でも愛称で呼ぶちよは呑気だ。
 また大きく息を吸い込んで、スクイーズから蟬ヶ沢に戻る。
「だって会うたびにからかってくるのよ。セクハラよ。パワハラで訴えてやるわ」
 レイン・オン・フライディ、本名を九連内朱巳といい、ちよとスクイーズ、蟬ヶ沢の恩人でもある人物だが二人の関係に関して茶々を入れてくる。この茶々を入れる人物がさらに同じ合成人間二人からも言われることもあり、少し頭を悩ませている。
「セミさん相手なら別にお風呂くらいいいけど」
「こら!言っている相手が中年の男性ってのを忘れてない?私の見た目がどっからどうみてもおじさんってわかっているでしょ。合成人間が身体的に性差がないとはいえ、中身がどうかまでは分からないのよ」
「でもセミさんならいいかなって」
 キレのいいハンドルの動きが一秒ほど固まる。瞬時に周囲の状況を見てハンドル操作を戻す。
 ちらっと助手席を見る。
「…………」
「目隠しをして入ればお互い見えないよ」
 あっけらかんと制服のリボンで目隠しをして言う。
 ちよが目隠しをされている姿を想像して、振り払う。
「…………余計に……その…………、でも駄目よ」
「目隠しをしたセミさんが先に浴槽に入って、後から私が入って入れば、ほら大丈夫」
「……それが任務ならでしょ」
「…………一人で入るのが大変なことになったら」
「…………今ちょっと片腕が動かなくなってきたわね。そうね、今日は頑張るけど、明日の金曜日からは大変かもしれないわ……ね?」
「ちょうど家についたし行くね!セミさん今日もありがと!」
 彼女の視線は家の方角を完全に向いて、無情にもそのまま帰っていった。
 お礼を言うときの振り向いた笑顔は悪魔的なかわいさだった。
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