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□王道賛美
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春も麗らか。桜は葉桜になっているGWの前日、俺は薔薇学園へと足を踏み入れた。
「うわぁ……まじで名前薔薇学園なんだ……うゎ……」
立派な門に掘られた名前を見て改めてパワーネームの脅威を身に感じた。
薔薇学園は県内では有数の進学校であり、金持ちが集まる男子高として有名だ。
通う学生は財閥の御曹司や政治家の息子などそうそうたる面子ばかりである。
加えて高校が所有している山一帯に豪華な校舎が建てられており、建築物としての方も高いという。
てか、高校が山一帯を所有て何?どんだけ金かけてんだよ。
一応は大手企業の孫であるが、ごくごく一般的な生活を送ってきた俺には到底馴染めそうに無い学校だ。
更には薔薇学園独自のルールなどもあり、部外者には知られていない内部が数多く存在するという。俺にはほんと無理。
しかし、俺はこれから薔薇学園1年生、川内三好として3年間この学園で生活するのだ。
なんと言うか、まぁ、ほら
「ホモくせぇよー名前からして色々アレじゃん……しかも全寮制とかさ。狙ってんの?ねぇ?狙ってるのですかね??」
よくあるBL小説やゲームの舞台みたいだなーわーすごーい。普通の学校に行きたかった!切実に!普通の学校に行きたかった……
門を前にしてブツブツと独り言を言い続ける俺、格好悪い。
いやさ、別にさ、この高校に行きたくないなーとか今なら引き返せるかなーとか全然思ってないよ。全然…
うん。正直に言うと行きたくない。これアレですやん、王道学園BLとか繰り広げられてそう。そんなん3年間も見続けなきゃいけないとかノンケの俺には無理なのです。察して。
ちなみにだが、俺の容姿は平凡も平凡、スーパーモブ顔だ。街中で俺を見かけたら5秒以内に顔を忘れられる自信がある。
だから、よくある『転校生が実はイケメンで〜〜』の流れは俺に関して言えば無いので安心である。
……言ってて何か悲しくなってきた。モブ顔が救いになるとかまじ辛い。
そうして1人悶々としていると突然声がした。
「うわぁー!!すげー!!門っ!高っ!!」
「うおっ?!」
いつの間にか隣には俺と同じ薔薇学園の制服を着た男の子が立っていた。
身長は165cm位か少し小さめでインパクトのある出で立ちをしている。
まず髪が凄い。失敗した現代アートなのかそれとも鳥の巣を緻密に最善したものなのか……黒々とした髪はパーマでもじゃもじゃしている。
そのせいで目は完全に見えない。
しかも、今の時代見ることはめっっったに無いほどの瓶底眼鏡だ。完全に目は見えない。不審者として通報されても文句は言えない姿だ。
そんなキングオブもっさりくんは、その姿とは真逆な声のでかさだった。
「ここが薔薇学園か!晃に言われて来たけど何だか面白そうだなー!!ここ、どうやって警備員さん呼べばいいんだ!?」
この子も独り言多いな〜〜そしてくっっそ声でかい。隣で聞いてる俺の耳がおかしくなりそうだ。
「うるせぇな」
思わず耳を塞いでそう呟くともぢゃ眼鏡が俺の方を勢いよく振り向いた。
「え?!お前、いつからここにいたんだよ!影薄くて気づかなかったじゃんか!」
まるで俺が悪いように言われるが先に門の前でウダウダしていたのは俺だ。
いや、なんの自慢にもならないけどさ、ね?
「もー!!ビックリしただろうが!人を驚かせるのはダメなんだぞ!」
「え、いやー、はい、ソッスネ」
「謝ったんなら許す!」
いや、俺何にも悪く無いからな?謝ってないからな?思わず顔を歪めてしまう。
だか俺の気持ちは伝わらなかったらしい。
「お前はちゃんと謝れるからいいやつだな!なぁ、お前もここの生徒なのか?名前教えろよ!」
「え、えー」
きんきんとする程の音量で話しかけられ俺のHPはもうゼロになりそうだ。
生まれてこのかた初めてこんなに無礼な奴に会ったわ。こいつ苦手だわ。
「えー、あー、俺の名前は三好川内(みよしこうち)だ」
「川内か!んじゃコウって呼ぶな!俺は鳥谷隼人!隼人でいいから!友達だからな!」
「あーはい、うん」
思わず偽名を言ってしまったが、もじゃもじゃもとい、鳥谷隼人は気づくことはなかった。
そしてバシバシと俺を叩くと友達認定してくださりやがった。
俺、お前と友達になった覚えないんだけどーとはとても言い出せない勢いだ。
てかお前あれだな、王道くんです!て感じ100%だな。狙ってんのそれ?
そして暫く鳥谷、もとい王道くんは「友達!友達!」と狂ったように連呼すると、突然
「あー!!!!やっば!俺、早く理事長に会わなきゃいけないんだった!!!コウ!またな!」
「え」
そういうと颯爽と2M以上ある門を軽々と飛び越え校内へと進入していった。
野生児なのかな?
残された俺は
「……普通に警備員さん読んであげてもらおう」
普通に門を開けてもらった。
そしてふと思う。
「アレが王道転校生ってやつか」