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□王道賛美2
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 台風のように暴れるだけ暴れると鳥谷は門を飛び越えていった。猿なのかな?
俺はという、しばらくぼんやりとしていたが

「・・・あ、俺も早く学校いかなきゃいけないじゃん。行こう行こう」

ごくごく普通に近くにいた警備員さんに門を開けてもらった。

「こんな時期に転入なんて珍しいね。キミ、そのネクタイの色は1年生?」
「あ、はい。そうです」
「そっか〜若いな〜。うんうん、おじさんには若さがまぶしいよ」
「いや警備員さんってまだ若いじゃないですか」

心の中で「しかもめっちゃ美形・・・」と呟く。何なんだ、ここは警備員までも美形じゃなきゃいけないルールでもあるのかよ。ちきしょー。

20代後半か30台前半といった容貌の警備員さん。スタイルもすらっとしていて足がめっちゃ長い、さらに垂れ目がちな目元には泣き黒子。かっちりとした警備服がよく似合っている。
謎の色気むんむんである。
 
 正直、そこら辺のモデルよりもレベルが高い。何で警備員なんかしているのか不思議になる。

 
 思わずモブ顔のひがみが吐露しそうになる。むっとしてしまった俺を警備員さんは面白そうに笑う。

「あははは、ありがとね」
「思ったこと言っただけですよ。あ、門開けてくれてありがとうございます」
「いいえーそれが僕の仕事だからね。・・・でもキミはちゃんと僕に声かけてくれたからよかったよ」
「え?」

警備遺産を見ると困ったような笑顔を浮かべていた。

「ほら・・・君と一緒にいた子。門飛び越えちゃったじゃない?正直、困るんだよね・・・」
「ああ・・・確かに・・・」

門を飛び越えて構内へと侵入を果たした王道くんを思い出し2人でしょっぱい顔になる。

「いやぁ・・・ここには結構務めているけど門を飛び越えられたのは初めてだよ。ああいう子もいるんだね」
「あれはかなり特殊なタイプだと思ういますけど」

あんな奴が大量に存在したらたまらない。

「あはは。それもそうか、ならよかったよ。・・・そういえば、あの子は君の友達なのかい?仲良く話してたみたいだったけど」
「え!?い、いえいえ!!!偶々ここであったから世間話をですね!別に友達というわけでは!!!」
「そんなに必死に否定しなくてもいいよ」

あんな奴と同類だと思われたくなかったので必死に否定すると、警備員さんに笑われてしまった。・・・恥ずかしい。

「いや、その、なんて言うか、俺、ちょっとあいつのこと苦手みたいで・・・すみません。初対面の人にこんなこと言っちゃダメですよね」
「うんうん。素直なことはいいと思うよ。僕のほうこそごめんね?本当はキミが困っている姿見えてたんだ」
「え!」
「でも電話をしてたから話しかけることが出来なくて・・・本当にごめんね?君が困ってたのに放置しちゃって」
「いえいえ!お仕事なら仕方ないですし。気になさらないでください!」

申し訳なさそうにうなだれる警備員さんに慌ててそういうと、彼は申し訳なさそうにほほ笑んだ。

「本当に君はいい子だね・・・ありがとう。ちょっと落ち込んでたから気持ちが楽になったよ」

そういって俺の頭を撫でた。
 
 初対面の人に頭を撫でられびっくりしたが不思議と嫌悪感を感じることはなかった。

「・・・なんか恥ずかしいっす」
「うん。ごめんね?でもいい子だったから、つい撫でたくなっちゃった。・・・嫌だった?」

警備員さんは蜂蜜色の瞳を細めながらそう聞く。
何故か赤面してしまいそうになり、ぶっきらぼうに「別に嫌じゃない」と答える。

「そっか。よかった」

そう言ってさらに頭を撫でる警備員さんにどこか怪しい色気を感じた。

「あ、あの、俺、早く学校に行かないと・・・」
「・・・・ああ、そうだね。ごめんね。引き止めちゃって」

 悲しそうな顔になる警備員さんに罪悪感を抱く。

「いえ!その、これから3年間お世話になります。よろしくお願いします」
「!そうだね、3年間よろしくね」

俺の言葉を聞いてにっこりと笑みを返してくれたので、俺もなんだかうれしくなった。

 そして警備員さんは重厚な門をパスワードを入力して開けてくれた。
俺はもう一度お礼を言って門をくぐろうとすると後ろから声をかけられた。

「名前を言うのが遅くなっちゃったけど、僕の名前は中尾椿だよ。基本毎日門のそばにいるから何かあったら声をかけてね。門番って退屈だからお喋りの相手になってくれたらうれしいな」
「ありがとうございます。俺は川内三好っていいます!俺も時間が空いたら中尾さんのところに遊びに行ってもいいですか?」
「椿でいいよ。うん是非遊びに来てね・・・それじゃぁ、高校生活を楽しんで」

そうにっこり笑って椿さんは俺を見送ってくれた。
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