1.夢小説

□漂流者
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ど(漂流する)

「次」

男の堅い声がした。
私は白塗りの廊下に立っていた。

ここを…私は知っている。

歴史上のすごい人物を異世界に飛ばしてしまう危ない所だ。
何故危ないって私がまだうら若い21の作業服を着たOLだからだ。だからこの状況は目の前の眼鏡が何か勘違いをして私を異世界に飛ばそうとしているか、私が将来歴史的に有名な凄い人物になるか、である。
それはない、と思う。
何故なら私は典型的なゆとり世代だからである。でももし、私がこれから劇的に進化して、これからお会いする方達と並び立つほど偉大な、有名な人物になるのなら、それを教えて欲しい…!それを…!

「行け、漂流物」
「えっまだ待っ…!」

黙って興奮していたら凄い力である扉をくぐらされた。体が竜巻の中に入ったかと思うくらいぐるぐると回転し、目が疲れたのか、単に気絶したのだったか、目をつぶった後、開いたら硬い石畳の上で目を覚ましていた。

上等な布に描かれた木瓜の紋が目の前に。そして、

「起きたか、娘」

とその傍らで木箱の上に座った眼帯のイケオジが言った。

「お前と一緒にそこの赤い男が倒れておったんだが…知り合いか?」

私は隣で寝ていたムキムキお兄さんをちらりと見やって、首を横に振った。オジサンが口があるのならしゃべれと言ったので口を開いた。

「知りません」
「ホントか〜?」
「…」

…。

「本当です、この人と来た訳ではありません。そもそも連れを連れて来ていないし、そもそも、来たくて来た訳ではないし、」
「俺もそれよ。部下に裏切られて居所を焼かれて逃げおおせたと思ったらここに来ていた」
「…」
「はは、そんな顔をするな。この通り無事だし、もう一人仲間もいる。今は多分安全よ」
「多分て…」
「そんなことよりあれだ、娘。お前……お前は、何者ぞ?」

信長は私に鉄砲を向けた。おいおい、そんな安全システムもきちんとしてないものを人に向けるなよ!危ないだろが!
冷や汗をかきながら銃口を手で除け射先から逃れる。何者か聞ぐらいで銃なんて向けなくていいじゃん。そんな気持ちがそうさせた。よく撃たれなかったなと思う。

「小鳥遊唯、と申します」
「小鳥遊?知らん名だなぁ。国はどこだ」
「国?日本ですが」
「日の本なのは顔を見れば分かるわ。俺が言いよるのはお前の住んでいる地域の名だ。出身だ。相当な天然だなぁお前。俺の時代なら手討ちもんだぞ。多分お前は俺の時代よりもっと先の日の本人なんだろうがな!」

なんだか苛つかせてしまったようだ。ええと、この人が分かるようにお話しないといけない訳か。地域の名前なんて知ってもなんにもならないと思うけどな。

「ーーー!!親父殿(おやっど)!!」

オジサンに謝ろうとしていると隣のお兄さんがいきなり起き上がった。何語だ?
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