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□SugarBlue
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透明なガラス瓶に閉じこめられた、かわいい角砂糖たち。
一口齧れば舌の上でほろほろと溶けだし、痺れるぐらいの甘さが喉の奥で広がる。
「女の子はお砂糖とスパイスと素敵な何かで出来ている」
マグルの子供たちの間で昔から歌い継がれてきた詩を教えてくれたのは、ブロンドの髪と人懐っこい笑顔がかわいい双子の妹の方だったと思う。

「また砂糖食べてるの」

動物たちの餌やりを終えたニュートがトランクからひょっこり顔を出す。

「食べすぎは体に良くない」

「女の子はお砂糖で出来てるから大丈夫、クイニーが教えてくれた」

ニュートが小さく首を横に振り悪態をつく。
お砂糖とスパイスと素敵な何か。
素敵なものと言えば甘いもの、つまり砂糖だ。
初めに砂糖を食べた人は天才だと思う、マーリン勲三等を授与したい。
アルコールみたいに、噎せ返る程の甘さが嫌なことも悲しいことも忘れさせてくれる気がする。
スパイス、よく分からないけどこれもたぶんお砂糖のことだろう。
甘味は幸せの秘訣である。

「生の砂糖だけっておいしいの?」

「甘くておいしい、ニュートにも一個あげる」

真っ白い角砂糖を指で一つつまんでニュートの口元に持っていく。
ぱくっ、角砂糖を持つ指を唇が掠めた。
頬をもごもごさせながら咀嚼し、「んー……」と眉をひそめて唸る。

「甘い……あげる」

不意に頬を引き寄せられ、重ねてきた唇から溶けかけの角砂糖がとろりと舌の上に落とされる。
口内で人肌に溶かされた角砂糖はいつもより甘く感じられた。

「おいしい?」

べたつく口元に無意識に舌を這わせればちゅっ、と唇の端に口づけが落とされる。

「もっと食べて……」

角砂糖が唇に柔く押し当てられる。
薄く口を開けば、嬉々として甘くとろけるように青い瞳を細める。
これではまるで餌付けだと、彼が大切にしているトランクの中の動物たちを思い浮かべた。
痺れるような甘さが脳髄まで麻痺させながら、真っ白い立方体が体の中で溶けだし、やがて毒となる。
彼のくれる砂糖は、少し甘すぎる。



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