Puppy Loving You…

□T
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その人は、とても優しい目をしていた。

一つ先輩で、ハッフルパフの4年生。
時折兎の世話や温室の植物の水やりをしてくれている。

誰もやりたがらないような仕事を、
誰に言われずとも自分から進んで。

それなのに誰も見向きもせずに、
むしろ「変なやつ」といつも馬鹿にしながら陰から笑っていた。

木の上の巣から落ちてしまった雛、
私は何もしてあげられなくて、せめて少しでも寒くないように温めてあげることしかできなかった。

どんどん弱っていく雛に、
このまま死んでしまうのでは……と不安で泣きそうだった時、彼がやって来た。

ニュート・スキャマンダー……。

彼は授業を休んでまで、雛のために一生懸命色々考えてくれた。

とても、嬉しかった。

自分の事より人の事、
弱いものの気持ちを理解して寄り添える、思いやりに溢れた人。
彼のような人は私を含め、私の周りにはいなかった。

みんな悪い人たちではないのだ、付き合ってみると話もよく合うし、心の温かい人たちであることに気づく。
でも、最初に生まれた疑念や不信感を自分の中で完全に払拭出来てないせいで、どうしても疑いの目で見てしまうのだ。

ほんとはまだ心の中ではマグル生まれって思ってるんでしょ?
自分たちは違う、先祖代々受け継がれた純血の魔法使いだと。

一緒にいても、自分の中で無意識に線引きしてしまって
そんな狭量な自分が好きになれなかった。

――

時折見かける彼女は、いつも男女問わず沢山のクラスメイトに囲まれていて、
輪の中心で楽しそうに笑っていた。
温室の隅で瀕死の雛を前に泣き出しそうになってた少女とは別人に思えた。

リジー・ヴァンクス……。
成績優秀でクラスの人気者。

彼女は、自分とは違う世界に生きていた。
もしかしたらあの時もほんとは迷惑だったかもしれない、自分のほうが先輩だから、要らぬ気遣いをさせてしまったのかもしれない……。

ここのところそんな事ばかり悶々と考えていた。

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