Puppy Loving You…

□T
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誰もいないがらんどうの医務室。
柔らかな日差しが差し込み、開け放たれた窓から風が吹き抜ける度に白いカーテンを揺らす。

特別ですからね、さあさこっちへ。
マダム・ポンフリーが嬉しそうに手招きする。

「今日、迎えが来るのですよ。でもその前に一目会いたいだろうと思って」

籐のかごに掛けられた布を取り去るとかごの中から灰褐色の頭がひょこっと顔を覗かせた。
ふわふわの羽毛が寝ぐせのように立ち上がり、くりっとした金色の瞳が不思議そうにじっとこちらを見つめていた。
リジーがわあっと声を上げ相好を崩す、その表情はとろけきっている。
手を伸ばしかけて、はっと我に返りニュートに尋ねた。

「お辞儀をした方がいいかしら」

「えっと、どうかな?まだ雛だし……」

「でもこの可愛さの前に誰だって跪かずにいられないわよね」

そう言って深々とお辞儀をした。
ニュートも戸惑いながら頭を下げた。
すると雛もちょこんと真似して頭を下げた。
隣からキャー!とため息交じりに黄色い声が上がった。

「抱いてみますか?」

「いいんですか」

ぱあっと顔を輝かせて言ったのはニュートの方。
落とさないように慎重に受け取ると最初に抱いた時よりずっしりと確かに重みを感じた。

「あ、重くなった」

「この前より大きくなってるもの」

急に見ず知らずの者に抱かれて怯えてるのかじっと身を固くしていたのが、しばらくするといつもより目線が高いことに気づき、身を乗り出してきょろきょろ辺りを観察し始めた。
今度はリジーに手渡すと、雛をぎゅうっと抱きしめその鼻先にキスを落とした。

「はあ、食べちゃいたい」

「食べたらなくなっちゃうよ」

もう一度固く抱きしめ、そっとかごに戻してやった。

「もういいの?」

「うん……」

リジーは目を潤ませながら、名残惜しそうにそっと雛を撫でた。

「元気でね、幸せになるのよ」

種族が違えど、たとえ二度と会えずとも。
きっと、忘れられない出会いになる。
リジーはそう確信していた。

――また、いつか。

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