Puppy Loving You…

□T
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ついに怪物の正体まであと一歩のところまでやって来た。
そして今夜、噂の真相を実際にこの目で確かめに行く。
運が良ければ、図鑑でしか見たことのない魔法動物、ヒッポグリフに会えるかもしれない。
こんな絶好の機会を逃す訳にはいかない。

リジーは舞い上がっていた。
それと同時に、今までに無く緊張感と恐怖も胸に抱いてた。

禁じられた森への生徒の立ち入りは原則禁止されている。
自分は、人生で初めてそれを犯そうとしているのだ。

そのことを考えると緊張で指先が冷たくなり、後ろめたさに胃がきりきり痛む。
しかしそれよりも、若い好奇心とほんの少しの怖いもの見たさには抗えそうになかった。

何よりニュートがいるから。
彼と一緒なら何だって出来そうな気がした。
期待と不安に胸を弾ませ、気を抜くとどうしようもなく頬が緩むのを何とか堪えていた。

「勉強熱心なのね、折角のお天気なのに図書室で過ごすなんて」

スリザリンのエンブレムを付けた金髪の少女、シエナ・マルフォイが徐ろに近づいた。

「試験で落とした分、早く取り戻さないとね」

「みんな言ってるわ、あなたがいないと張り合いがないって、私もそう」

「そんなことないと思うけど」

小首を傾げて笑ってみせるとシエナは肩を竦めた。

一体何の用なんだろうか、どうせまたくだらない嫌味を言いに来たのだろう。

マルフォイ家は代々続く名家でシエナはその一人娘だった。
彼女の父親は魔法省の役人でしかもホグワーツの理事会の重役、生徒の中でも彼女はそれなりの力を持っていた。
絶対的な純血主義の親の影響を強く受けて育ち、自分の血に誇りを持っており、マグル生まれのリジーを魔法使いに相応しくないと忌み嫌っていた。

本を戻しに棚の間を行ったり来たりしてみるもシエナはしつこく付き纏ってきた。

「あなた、最近あの人と仲が良いんですってね、4年のニュート・スキャマンダー先輩」

「そうよ、それが何?」

「良かったわね、お友だちが出来て。出来損ない者同士通じるところがあるのかしら?」

「彼はいい人よ」

「兎やマンドレイクと喋ってるって聞いたわ、そんなの変よ」

「……別に、私だってあなたに好かれようだなんてこれっぽっちも思ってない」

勇気を振り絞ってきっぱり告げると、シエナは軽く肩を竦めただけだった。

「彼は知ってるの?あなたがマグル生まれだってこと」

「あなたに関係ないでしょ」

「私がお父様に言えばあなたなんか梟を待つ間もなく退学になるのよ」

「どうぞご自由に」

キッと睨みつけると踵を返して立ち去った。

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