Puppy Loving You…

□U
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新学期が始まり二週間。
リジーは四年生になり新たな学科が始まり、始業式のごちそうも去年のニュートとの禁じられた森への冒険も嘘みたいに、課題の提出期限に追われ淡々と過ごしていた。
ある日の事、上級生が授業をしている教室から度々ワルツがリジーたちの教室まで聞こえてくるようになった。
その日のランチタイムにいつもの仲良しグループでルームメイトでもあるオルガとミニー、そしてリジーの間ですぐにその事が話題に上った。

「さっきワルツが鳴ってたでしょ、六、七年生がダンスの練習してたのね」

「ダンスぅ?どうして?」

「上級生になるとダンスも踊れないといけないの?」

「ワルツなんて私踊ったことないわ」

「あんたたち知らないの?」

しっかり者のミニーが呆れはててため息をついた。

「ダンスパーティーよ!大広間でみんなドレスを着て男女ペアで踊るの!はあ、羨ましいわあ……」

オルガとリジーはきゃあきゃあ声を上げて早速ドレスについてあれやこれやと理想を語り始めた。

「私、スカートがふんわり広がったレースのドレスがいいわ」

「ドレスは何色?やっぱり赤?」

「白も捨てがたいわね、ねえ!私たち三人お揃いで何か身に付けるのはどう?」

「ステキ!いいアイディアね」

「ちょっと待って!ストップ!」

ミニーが急に声を張り二人を遮るように手を上げたのでオルガとリジーは互いに手を取り合ったままきょとんと彼女の方に注意を向けた。

「そもそも男女でペアを組まなきゃいけないのよ、あなたたち二人で踊るつもり?それに、残念ながらパーティーに参加できるのは六、七年生だけよ、私たちは早くて二年後ね」

そんなあ、という二人の不服そうな声が重なる。
ミニーの言葉にまるで楽しみにとっておいたデザートをうっかり床に落としてしまったような気分だ。
絶望的なまでにしゅんとしょげかえっていたオルガがぽつりと呟いた。

「二年後にはオーレストはとっくに卒業してるわ……」

「オーレストって、オーレスト・ブラック?スリザリンの?」

「オルガの好きな人ってあの人だったの?」

「ええ、ええそうよ、スリザリンだけど……だってかっこいいんだもん……」

スリザリン生が集まっているテーブルの方を覗き見ながらオルガはうっとりため息をついた。

「ミニーはいないの?誰か素敵だなって思う人」

これを合図に話の方向は多感な少女たちの最も興味のある話題、恋愛について向けられた。

「誰かって誰よ」

「だめよ、ミニーはそれはもう勉強に夢中もいいとこなんだから」

「その気になったら引く手数多なのにね、男子ってばどいつもこいつもミニーしか見えてないのよきっと」

「それを言うならリジーもでしょ、ショーンは今のうちから二年後のダンスパーティーに向けて申し込むつもりなんじゃない?」

「全く相手にされてないけど」

「だってあの人しつこいんだもん……」

リジーの一言に二人は思わず笑い合った。
それで、とミニーが向き直ると、取り調べでもするような調子で言った。

「リジーの好きな人って誰なの?」

「私は別に……」

「逃がさないわよ、分かってるんだからね」

「あの人の事が好きなんでしょ、一つ上で背が高い男の子」

「て言うかもうすでに付き合ってるとか?」

「うそー?!」

「違う違う!全然そんなんじゃないから!」

照れなくても、オルガにこつんと肘を小突かれる。
彼女らはリジーが押しに弱いこともよく知っていた。

「うっ……まあ、そうだけど……」

案の定観念して歯切れの悪い調子でぽそりと独り言のように言った。
立ち上がって何寮?何寮?とあからさまに探し始める二人を慌てて席に付かせる。

「あーあ、こりゃショーンは泣いちゃうわ」

「背が小さいの気にしてるもんねぇ」

「積年の片思いに失恋して挙句、どこぞの背の高い男とリジーがくっつくのなんて見てられないでしょうねぇ」

「くっつくって……それにあの人はもうだいぶ前にちゃんときっぱりふって、」

「分かんないよーそんなのー」

「あいつ意外とねちねちしてるから、あんたが今のとこ誰のものでもない間はチャンスだと思ってるのかも」

「ねちねち……こわっ」

斯くして三人の恋愛談義は「ショーンはねちっこい」と言う結論に至り幕を下ろした。
この日を境にショーンにはよく膨らむドルーブルの風船ガムにちなんで本人の全くあずかり知らぬ所でドルーブルという不名誉な渾名が付けられたとか。

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