Puppy Loving You…

□U
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「――先輩の事が好きなんです、お願いしますっ」

「気持ちは嬉しいけど――」

図書室の隅に響く男女の声。
断片的な会話からも内容は容易に想像がつく。
自分はなんてタイミングが悪いんだ、あの二人も何もこんな所で話さなくても。
咄嗟の事に本棚の陰に身を隠したものの通り道を塞がれてしまい立ち去る事も出来ず立ち往生していた。
断じて立ち聞きではない、嫌でも耳に入ってくるのだ。
会話が途絶え、女子生徒が目元を拭いながら走り去っていくのが見えた。
緑のローブ、スリザリンだ。
可哀想に、告白は失敗に終わったらしい。
続いて男子生徒の方が見えた。
同じくスリザリンのトレードマーク、長身で黒髪の中々の美少年。
端正な顔立ちには見覚えがある。
二人が行ってしまったのを確認すると堪えていた呼吸を一気にはいた。
図書室の少しかび臭い独特の空気を肺いっぱいに取り入れる、本の匂いだ。
本棚に背を預けて空気中に舞う銀色の雪のような埃をぼんやり数える。
あいつは、モテるだろうなあ……とふと頭を過ぎった。
ああいうのが好きなんだろうか……。

「何やってんの」

どくん、と心臓が跳ねる。
しかしそこに立っていたのは思い描いていた人物ではなく、

「なんだ、リタか……」

「悪かったわねリジーちゃんじゃなくって、何見てたの?」

「なんでもいいだろ――ちょっと待って今のどういう意味」

リタは意味ありげな笑みを浮かべ「べっつに〜?」とうそぶいた。

「リジーちゃん向こうにいたよ」

「えっ」

「嘘」

「なんだ……」

「というのも嘘」

リタはぐっと顔を近づけると声をひそめて言った。

「あんたさぁ、最近やたら図書室に通ってるのはリジーちゃんに会えるかも〜なんて思ってんじゃないでしょうね」

「なんでそうなるんだよ」

心臓が痛いくらい飛び跳ね早鐘を打つ。
拍動により急ピッチで全身に回された血液が嫌な汗を流す。
リタは訝しげに眉をひそめながらも目はくるくる笑っていた、絶対からかってる。

「ちゃんと伝えなきゃ分かんないよ」

「何を」

「リジーちゃん待ってんじゃないの、あんたのこと」

違う、そんなんじゃない。
何を以ってそんな結論に至るのか詳しくお聞かせ願いたい。
黙る僕に、リタはつまらなさそうにため息をついた。

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