Puppy Loving You…

□U
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ある日起きた謎の紛失騒ぎ、厨房の銀食器、生徒の私物、ホグズミードの掏摸。
リジーはすっかりホームズになりきって彼女の脳内ではめくるめく推理劇が展開されていた。
ふと目を離すと上の空で、彼女の手からじょうろが段々滑り落ちていくのをニュートは半ば面白そうに見守っていた。

「リジー?」

ニュートの声ではっと我に返る。
じょうろの水はちょぼちょぼと流れ続け、ちょうど鉢から水が溢れ返ったところだった。
マンドレイクの葉がふるるっと身震いし、葉に掛かった滴がリジーの頬をぴちゃっと濡らす。
眉をひそめて、気難しい表情を浮かべたまま濡れた頬を手の甲で拭う。

「どうしたの?」

彼にとって聞くまでも無かったが一応念の為に尋ねた。
何を考えているかは容易に想像がついた。

「あのね、噂のことなんだけど……」

「うん?」

語尾がだんだん小さくなっていき、うーんと唸りながら首を傾げて思案を巡らす。

「密輸団の残党がわざわざホグワーツまで来ると思う?そんなに高価な物はないし換金するにも時間が掛かる、手っ取り早く現金だけ盗んで外国に逃げた方がよくない?」

「じゃあ、生徒の悪戯?」

「合言葉が分からないわ、そう簡単に漏れるとも思えないし、だったら絶対見た人がいるはず」

「じゃあ……」

一体誰が、どうやって、何の為に?
共通点も特異点も特徴もない、犯人の姿を見た者もいない。
何の手がかりも残さず、そんなこと可能なのだろうか。
考えれば考えるほど違和感だけが膨れ上がって核心から遠のいて行くような気がする。

「……それで、どうするんだい?」

「え?」

「ここでくさくさ考えててもしょうがないだろ、まずは……聞き込み?」

リジーは驚いてニュートを見つめた。
どうせ止めても無駄だろ、と言うようにわざとらしくため息をつく。

「一緒に来てくれる?」

「ただし無茶はしない、これだけは約束。前みたいな危ない事も一切なし」

リジーは大きく何度も頷いた。
そうと決まれば善は急げ、まずはどこに行く?とニュートが尋ねる。
すぐに一人が迷わず頭に浮かんだ、まず誰より先に話すべきだとリジーは思った。

「シエナのところに行こう」

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