Puppy Loving You…

□U
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「ちゃんと話せるといいんだけど」

リジーがぽそりと呟く。
中庭のベンチに座ってシエナが通るのを待つ間、彼女の手は忙しなく握ったり開いたりしていた。

「大丈夫?」

「何が?」

「前にその、嫌な思いしたことがあったろ」

リジーは少し引きつったような苦笑いを浮かべた。
もちろん、忘れられる訳がない。
あの時は本当に辛かったし嫌な思いもした、これからも絶対打ち解けることはないと思う。
でも今は違う、もう一人ぼっちじゃないから。

「やっぱり苦手よ、でも」

動揺して震えていたシエナの姿がリジーはどうしても頭から離れなかった。

「大切なものを失くして、きっと困ってるだろうから」

思ってもみない答えにニュートは軽く衝撃を受けた。
自分の方が年も上で身長も上なのになぜこんなにも大人びているのか。

「……来た」

リジーは意を決して立ち上がり、深く息を吸い込むと拳を握りしめてゆっくりと歩み寄って行った。

「こんにちは」

「……邪魔」

シエナはつんとすましてすたすたと歩いて行ってしまった。
言葉にいつものような勢いや自信はない。
リジーは努めて明るく振る舞い、めげずに話し掛ける。

「今朝の、ブローチの話を聞きたいんだけど」

「……」

「どんな形?最後に見たのはいつ?」

「答える筋合いないわ」

我慢ならなくなったシエナはぴたっと足を止めると踵を返して振り返った。

「前から言おうと思ってたのだけど、あなたを見てると苛々してくるの。いつもへらへら笑ってて、まるで人を哀れむかのように見下して、関係ないことに首突っ込んで、何様のつもりかしら、全部自分の自己満足の為でしょ?」

ニュートが仲裁に入ろうとしたがリジーは無視してシエナの目を真っ直ぐ見た。

「私はそんなつもり、」

「あなたの本性は知ってるのよ、そうやって周りに親切心ばら撒いて自分のこと善人と思い込んでる、勘違いも甚だしいとこね」

「人に濡れ衣着せておいて流石にそれは無いんじゃない?それに、あんな公衆の場で大声を出すのも淑女としてどうかと思いますけど」

はっきり言い放つとシエナは途端に口をつぐんでしまった。
ニュートは心の中で拍手喝采を送ったがこれ以上ここにいてもどうしようもないと判断した。

「もう行こう」

ニュートに促されて二人はその場を離れた。
リジーの胸には苦い痛みとほんの少しの後悔が広がっていた。

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