Puppy Loving You…

□U
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屋敷しもべ妖精たちの朝は早い。
早朝、まだ日が登りきってないうちから朝食の準備に取り掛かる。

朝の一時、厨房は戦場と化す。
サラダをこしらえ、パンをトーストにして、デザートまで完璧に。
前日から下ごしらえをしておいたスープが鍋の中で温まってきた頃、錫製の大鍋が床に叩きつけられ悲鳴を上げる音と、新入りの屋敷しもべ妖精のか細い頓狂な声が重なった。

一番古株の料理長と呼ばれている屋敷しもべ妖精の怒号が飛ぶ。
慌てふためいて泡を食った新入りは、床で公転しながら泣き喚く鍋を捕まえて、青白い顔で食器棚の方を指さした。
“銀食器が、元通りになってます! ”

朝、いつも通り一番に目が覚めたミニーは、寝ぼけ眼を擦りながら、何気なくベッド脇のキャビネットを見た。
二、三度ぱちぱちと目を瞬き、ごしごし擦って、夢でも見ているような心地で恐る恐る手を伸ばす。
失くしたはずのロケットが朝日を受けてきらきらと輝いていた。

「……オルガ、リジー、 二人とも起きて! 早く! 」

そうして、リジーとニュートの暗躍により、なくしものは元の持ち主の手元に戻っていった。
聞き込みにより得た情報と照らし合わせながら、一つまた一つと数日間掛けてリストを全部消化していき、最後にリジーの手元には、持ち主の分からないブローチが一つ残った。

「リタ、」

「ああ、リジーちゃん。どうしたの?」

「お願いがあるんだけど……」

リジーがブローチを取り出すとリタは小さくあっ、と声を上げる。

「これ、シエナに返しといてくれない?」

リタはブローチを手の上に乗せ、ターコイズブルーの花をそっと撫でた。
色褪せた幼い日の記憶がふつふつと蘇る。
大きな書斎、ステキなものがいっぱい飾られたガラスのショーケース、可愛いブロンド。

「このブローチ、どこで……」

「森で拾ったの」

「森? ……あんたたち、まさか」

彼女は察した様子で、思わず声を張り上げ、慌てて口元を抑えた。

「何も言わないで。適当に机の上にでも置いといてくれたらいいの、それかあなたが拾ったことにして」

「だめよ、そんなの」

「お互い気まずい思いをしたくないの、お願い」

リタはほんの数秒迷った挙句、一つ息をついてブローチをローブの内ポケットに滑り込ませた。

「……分かった、私から彼女に渡しておくわ」

「お願いね、大切なものだろうから」

「ええ、とても。ありがとうリジーちゃん」

ーー

「どこでこれを……?」

リジーちゃんが。
リタが短く答えると、シエナは僅かに目を見開いた。

「あなたには言わないでって、口止めされたわ」

「そう、だったの……」

シエナはブローチをそっと手の中に収めて目を伏せた。

「もう意地を張るのは止しなさいな」

幼い頃から姉妹同然のように育ってきた二人。
リタはシエナを実の妹のように可愛がり、シエナも彼女を姉と慕い、それは互いに成長してホグワーツに入っても変わらず。
リタはシエナの良き理解者で、彼女の苦悩もよく知っていた。
幼い頃からそうしてきたように、優しく諭し、妹のブロンドの髪をそっと撫でた。
じわっと視界が滲んで、涙が溢れ、ぽたぽたと手の甲を濡らす。
母の形見のブローチを胸に抱いて、リタの肩で声を押し殺して涙した。

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