Puppy Loving You…

□U
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古い屋敷の中は動物たちでいっぱいで、動物の鳴き声と子供たちが元気いっぱい走り回る足音が絶えず響き渡り、家の中はまるで動物園のようだった。

父親は知識人で子供たちにいろいろな話をして聞かせるのが楽しみだった。
母親は朗らかな明るい人で、長男のテセウスはとりわけ母親似で良い特質をしっかりと受け継いだ。
弟のニュートは大人しくて人見知りがちで、明瞭快活な兄とは正反対だったが、好奇心旺盛な父親似で何にでも興味を示した。
ある時は機械に興味を持ち、父親が大切にしていた懐中時計を持ち出して修理のしようがない程に分解してみたり。
またある時は生物のしくみに心を奪われ、幼い無邪気な好奇心ゆえに獲ってきたホークランプをバラバラにしてしまった。
ある程度の年齢に達した時にその出来事を思い出して、己のことながらよくもそんなことが出来たものだと酷く悔いたが、ある意味でこの経験が後のニュート・スキャマンダーを生みだしたと言えるのかもしれない。

この家の中心は基本的に動物たちであったが、その中でもケイリーは特別だ。
二人の子供が生まれる前からこの家に住み、家族を見守ってきた守り神のような存在。
スキャマンダー夫妻は結婚すると同時に家を買い、今までの仕事を辞め、新たな仕事を始めて間もない頃。
初めて繁殖に成功し、産まれたのがケイリーだった。
それは美しい見事な白銀の翼を持ち、瞳は蜂蜜のようにとろりとした黄金色。
彼女は実に賢く、大抵の人の言葉を理解し、信頼できるベビーシッターとしても優秀であった。
ケイリーの死に、家族は悲しみに暮れた。
ニュートはとりわけ彼女に懐いていたせいか、食事も拒んで泣き続けた。

時が流れ、ケイリーの墓はすっかり緑に覆われていた。
ニュートは学校帰りには墓に立ち寄り、伸びた雑草を抜いて墓標を磨き、そっと目を閉じて祈りを捧げる。
いつの間にかそれが習慣付いていた。
テセウスは11歳の誕生日を迎えるとホグワーツに行き、家族はしだいにケイリーを喪った悲しみを忘れていった。
だが彼にはそれが許せなかった。
まるで自ら傷を抉り出そうとするように、痛みを忘れまいと必死に思い出そうとしているかのような。
何かに興味を持つことも、感情表現も乏しくなっていった。

暑い夏の日のこと。
朝からいやな雲が太陽を覆い隠してしまって、じめじめとした蒸し暑い日だった。

「ロンドンへ行くには、どちらに行けばいい?」

二人は運命的な出逢いを果たす。

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