Puppy Loving You…

□U
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泣かせてしまった、大切にしてたのに。

「っ、スキャマンダー……!」

ショーンが怒りに声を震わせながら、胸ぐらに掴みかかる。
憤りと敵意を剥き出しにして睨みつけ、眼は赤く充血している。
てっきり、責め立てられるものかと。
どうせなら一発ぐらい殴られても構わないと思った、それで全て無かったことにしてしまえるのなら。

「ショーン!お願いやめて!」

「でも……っ」

リジーが泣きじゃくって声を上げる。

「違う、違うの、分かってるから……」

何度も何度も首を左右に振りながら、まるでそれしか知らないみたいに言葉を繰り返す。
ショーンは悔しそうに一つ舌打ちすると、すっと手を放した。
必至に自分に言い聞かせるように。
何事か、と騒ぎを聞きつけたギャラリーが集まりだす。

「リジー!どうしたの?泣いてるの?」

「ミニー……っ」

「一体何があったの?」

彼女はそれには答えず、ただミニーの肩に縋り付いた。

「リジー、落ち着いたら話がしたい、後で必ず」

願いを込めるように言うと彼女はこくこくと小さく頷く。
その眼は悲しげに逸らされたまま、交わることはなかった。
どうしてこんなことに。

―――

なぜあんなことを、ニュートはリタに問い詰めた。
彼女はただ遠くを見つめていた。

「アルテミス」

ふと、懐かしむように目を細める。

「懐かしい。アルと同じ名前だから、テセウスにあなたはニュートって呼ばせたがった」

「そんな昔の話をしているんじゃない」

「いつも一緒に遊んでた、すっごく楽しくて……」

リタは夢でも見ているようにうっとりと目を閉じた。

「……君は、犬の様子を見に毎日家に来たけど、アルテミスの話をしたことは一度も無かった」

「あなたと遊ぶ方が楽しかったの、子供って残酷だから」

「……僕は君のおもちゃじゃない」

「おもちゃだなんて、そんなこと一度も思った事ないわ」

彼女は小さく肩を竦めて否定した。

「じゃあどうして、!」

「分からない」

「は……」

分からないの、と繰り返す。

「あなたは変わってしまった」

「君が変わったんだよ、僕は変わらない」

「昔に戻れたらどんなにいいかしら」

「……本当に」

ぽつりと呟いた声は僅かに空気を震わせ消えた。
低く乾いた声はどこか悲しげで、昔読んだ何かの物語を思い出させた。
去っていく背中を呼び止めることも出来ず、どうかもう一度だけ振り返ってと願うことしかできなかった。

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