Puppy Loving You…

□U
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大広間前には綺羅びやかに着飾った人々が次々と出入りし、むせ返るような甘ったるい香水の匂いが鼻をつく。
ニュートは落ち着きなく、しきりにツイードのジャケットのボタンを付けたり外したりしながら人混みから少し離れた壁際に立った。
喉元のタイに指をかけ少し緩めると、息苦しさがいくらか和らいだ。
こういうのは苦手だ、ニュートは知らない場所に迷い込んでしまった野良猫のような気分で、そわそわと辺りに視線を彷徨わせた。

「こんばんは」

コツ、コツ、とヒールが地を打つ小気味よい音が響く。
振り返った途端に周囲の喧騒が魔法のように消え、ニュートはぽかんと口を開けたまま石像のように動けなくなった。
瞬きもせず目を奪われ、一瞬にして世界が停止する。
どう? と、リジーが得意げにスカートの裾を摘んでつま先で半回転する。
若草色のレースがろうそくの淡い灯の下でふわりと揺れた。
呆けたまま戻ってこないニュートに、リジーは首を傾げて眼前でぱんっと掌を打つ。

「フィニート」

空回りしていたレコードに再び針が落とされ、周囲はざわざわと喧騒を取り戻す。
数拍遅れてからぱちぱちと目を瞬いて、ニュートは小さく「わっ、」と後退った。

「こんばんは」

「こ、こんばんは」

真面目くさって礼儀正しく挨拶するとリジーはくすくす笑って言った。

「石化してた」

「ああ……たまになるんだ」

「ええ?」

何か言わないと緊張でどうにかなってしまいそうで、思いつくままに口を開いた。

「じっとしてると、よくガーゴイルに間違えられる」

「あははっ! 何それ」

張り詰めていた緊張の糸が緩む。
リジーは思わず声を上げて笑い、ほんのり紅く色づいた唇に弧を描いた。
僅かな沈黙が流れる。
曲が終わり、大広間では一斉に拍手が沸き起こった。

「じゃあ、そろそろ行こうか」

ニュートは辺りをちょっと見回すと、ぎこちなく手を差し伸べた。
リジーは少し照れくさそうに小さく咳払いして誤魔化すとそっと手を重ねた。

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