Puppy Loving You…

□U
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休みの間リジーから届く手紙は本、主にホームズの事で埋め尽くされていた。
おかげでシャーロック・ホームズについて僕の頭の中にすっかり叩き込まれている。
彼女が逐一、事件の詳細からホームズがいかに頭脳明晰で、どのように解決に至るかを手取り足取り語ってくれるおかげだ。

でもそんな事、彼女に知られたくないから。
君が好きだからホームズを読み始めたなんて格好がつかない。
だから何にも知らないふりしてわざと魔法動物の話ばかりする。
お互いがお互い自分の好きな話を延々綴り、1mmも噛み合わないやり取りさえ楽しくて嬉しい。

でもリジーにとって僕はただの友人に過ぎない。
そんなの最初から分かってることで、彼女の友人枠に入れてもらえるだけでも満足だったのに。
それなのに、いつのまにか僕の思考は彼女に支配されていた。
時間が経つほどに収まるどころか思いは増していった。

かといって直接言葉に出来るような勇気も、ショーン・フィネガンのように行動で表せるような質でもない。
彼女がYESと頷く確信なんてどこにもない。
ならば、このまま自分の中で留めておいたほうがいいのではないか。
友達のままでいるほうが……

それでも、君の特別になれたらと願わずにいられなくて。
兄のような安心感なんて、感じてほしくなくて。
頭と心は決していつもイコールとは限らない。

降り出した雨粒が窓ガラスをぽつぽつと叩き、歪な線を辿って流れて落ちた。

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