Puppy Loving You…

□U
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「リジーちゃんっ」

頭の上から降ってきた声に、リジーは一瞬考えあぐねた。
声の主が誰か、すぐに心当たりは付いていたが一体なぜ?という疑問と驚きの方が勝ったからだ。

「リタ……っ、ビックリしたあ、どうしたの?」

リジーは無意識に声をひそめて周囲を見回した。
二人は互いに相反する寮だから。赤と緑は混ざり合わない。
幸い、近くに人の気配はしない。
しかし一方のリタはそんな事全然気にしてない様子だった。

「ねえ、リジーちゃん今年いくつ?」

「15、だけど……?」

リタはいたずらっぽく笑うと頬を寄せてこっそり耳元で囁いた。

「ダンスパーティーの事は知ってるでしょ?でね、その日に大広間には入れないけど、外でガーデンパーティーが開かれるの」

「ガーデンパーティー?」

「学生主催の非公式で夜中まで騒いでる、誰でも出入り自由だから下手したら大広間より賑わってるかもね、大きなケーキも出るし、それ目当てに来る連中もいるから」

「わあ、楽しそうね」

リジーはガーデンパーティーの様子を頭の中で思い描いた。
しかし、彼女がわざわざそれを伝えにやって来た意図は掴みかねていた。

「まだ少し先だけど、ドレスを準備しといた方がいいわ」

そこまで言われて気がつかないほどリジーは愚かではなかった。
途端に顔全体にぼっと熱が集まる。
頭の中では色々なことがぐるぐる回り、嬉しいやらにわかには信じられないやらでどんな顔をしていいのか分からず口元を手で覆った。
いっそのこと、水蒸気となって空気中に溶けてしまいたいくらいだった。
ーー
その様子をこっそり物陰から伺っていたニュートは、ほくほくと満足気な表情を浮かべ弾んだ足取りで戻ってきたリタを引っ張って隅に連行した。

「ちょっとちょっとちょっとちょっと、どういう事?」

「もう何?引っ張んないでよ」

「いやいやいやいや、二人で何話してたの?」

「どうしたの、壊れたレコードみたいに」

「リジーに、何を言ったの?」

思わず強い口調になり、リタが口元に指を当ててしーっと宥めた。

「ガーデンパーティーのこと教えてあげただけよ」

「ガーデン、パーティー……?」

「そうよ、あなたも前に誘ったけど付いてきてくれなかったじゃない」

ああ、そういえぱ。
以前そんな事があったような、無かったような。

「感謝してよね、あんたが誘いやすいようにきっかけを作ってあげたんだから」

「きっかけって……いやちょっと待って、」

「大事なのはタイミングとその場の雰囲気よ、頑張って!」

何に於いて重要なのか聞く間もなく、肩をぽんっと一つ叩いて激励すると、楽しそうに上下に揺れるように小さくスキップしながら彼女は行ってしまった。
一人取り残されたニュートは、出来ることなら窓から飛び降りてしまいたい気分だった。

「どうすんだよ……」

深い深いため息をついて、本棚にこつんと頭をぶつけた彼は耳まで朱く染まっていた。

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