Puppy Loving You…

□V
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純白の花嫁衣装に身を包み、白いベールを付けた花嫁をリジーは上から下までうっとりと眺めてから、鏡に向かって微笑んだ。

「綺麗よ、オルガ」

「ありがとう、リジー」

オルガはまだあどけない少女のような笑顔を浮かべて鏡の前で一回転してみせた。
流行りのすっきりとした形ではなく、ふんわりと広がるスカートとふんだんにあしらわれたレースが可愛らしいクラシカルなウェディングドレスは彼女によく似合っている。

「まさかオルガに先越されるとはね、私のブライズメイドを頼むつもりだったのに」

冗談っぽく笑って言えば、オルガがやれやれと呆れたように苦笑いを浮かべた。

「私、あなたからいつ招待状が届くかって楽しみにしてたのに」

長く裾を引くトレーンをせっせと直していたミニーがふと尋ねる。

「付き合ってもう何年?」

「まあ……そこそこ長いほうね」

曖昧に濁すと、オルガがご丁寧に「9年よ」と言い添えた。まあよく覚えていらっしゃること。

「なのに、まだ婚約もしてないなんて……リジーらしくないわ」

「ええ?」

思いもよらない言葉に思わず声を上げる。
すると、ばら色の頬にシルクの手袋を嵌めた手を添え、オルガが信じられないというような口調で。

「年上の彼氏に、告白されたその日に自分からチューしちゃうようなリジーが――」

「ちょ、ちょっと?!急に何言い出すの――!」

「――自分からほっぺにチューしちゃうようなリジーがっ、まだプロポーズもしてないなんて!」

ミニーも便乗して茶々を入れる。
当時のことを思い出して、思わず顔が熱くなる。
完璧遊ばれてる、なぜか私からプロポーズすることになってるし。
そんなに何回も「チュー」とか言わないでっ!

「まあ、冗談はともかく……焦ることもないけど、そろそろいい頃合いなんじゃないかしら。結婚って、思ったよりいいものよ」

オルガがどこか一つ大人びたような、すでに良妻の落ちつきを纏わせて言った。
リジーはふと、もう彼女に会えないんじゃないかという不安に駆られて怖くなった。
ホグワーツで一緒に過ごした懐かしい日々が遠い昔のように感じる。
あの頃の少女たちはもう、ここにはいないのだ。

「……もう、気軽にランチにも誘えなくなるわ」

目に涙を浮かべて言うと、オルガは新婚の花嫁らしい幸せいっぱいの微笑みで腕を広げた。

「ああ、リジー!泣かないで、みんなでハグしましょう。リジーとミニー、大切な親友二人に恵まれて、私は世界一の幸せ者ね」

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