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□独占欲
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「そういえば、」
ふと思い出したようにトムが口を開く。
囁きかけるでもなく、何気ない口調はあまりに場違いで。
にも関わらず、彼の低く柔らかな声に過敏になった神経が反応する。
「何?……っ」
過ぎた快楽に自然と涙が零れ、目を瞑れば、それに気をよくしたトムが私の耳を食んだ。
「前に、ピアスを開けたいと言っていたね」
熱のこもったため息と水音が鼓膜を犯す。
驚いて反射的に首を竦めると、仕置きだとでも言うように耳たぶを甘噛みされた。
「ひっ……」
「大抵は子供の頃にされるけど、君の国ではしないんだっけ……」
「……っ?!」
がりっと耳を齧られる。
皮膚の薄い部分を容赦なく歯を立てられて、食べられたんじゃないかと思わず耳に手をやる。
それを見て、トムが意地悪く口角を歪ませた。
「僕が開けてあげようか」
反対側の耳も食まれ、背筋を這い上がる冷たい指先に肌が粟立つ。
「大丈夫」
――痛くしてあげる。
長い睫毛に縁取られた瞳の奥で、紅がゆらりと揺らめく。
有無を言わさず唇を塞がれ、思考は彼方に追いやられた。