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□チューリップ
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「ほらみんな、ママが来たよ。ああ、ダメだろそんなことしちゃ、順番だって。こら二フラー、遊びは後にしてくれ。ドゥーガル?ドゥーガルはどこだい?」

エサの入ったバケツを持って立ち尽くすニュートの周りには、彼が育てている動物たちが続々と集まってきて身動きできないほどになっている。
その様子を私は少し離れた所から笑いながら見物していた。
魔法のトランクの中で暮らす動物たちは今や数え切れないまでに増え、彼は数多の動物たち、ビリーウィグのような昆虫から水の中で暮らす魚のような水生生物に至るまで、一匹一匹を見分け名前で呼ぶ。
魔法動物を保護し、育て、彼らが元のように自然界で暮らせるようにする。
いつかは別れなければならないと分かってるのに、どうして名前を付けるの?
ふとそんな事を尋ねた時、彼は困ったように笑いながら「家族だから」
別れが辛くなると分かってても、せめて一緒にいられる間は本当の家族のように、出来る限りの愛情を注いであげたい……と。
NYでフランクを手放す時あれ程号泣してたくせに。
それでも、あの子たち無しではいられないのだ。
「この子たちのためなら、僕は何だって出来そうな気がする」と、いつだったかそんなような事を話していた。
じゃあ、私は?
と、そんな意地悪な質問が今も胸の奥に引っかかっている。
もし私と、大事なトランクが今にも崖の淵から落ちそうになっていたら、どっちに手を伸ばす?
彼は迷わずトランクを選ぶだろう。
それでいい、そういう所を好きになったんだから。
それでも……彼の愛す動物たちの、自然界の一部になれたらと思わずにはいられない。

デミガイズのドゥーガルを首に巻きつけたまま、ニュートが振り返る。
それに手を振って応えると、足元に群がる動物たちを避けながらこちらへ歩いて来た。

「ちょっと来て」

「え、ええ!」

「いいから」

「待って待って、無理無理無理!」

動物は好きだけど、あんなに大量に来られるのは少し怖い。
特にエサの時は、普段大人しい彼らでも目の色が変わる。

「大丈夫だから、ほら!」

優しく手を引かれ、動物たちの中へ入っていく。
その手は、励ますようにしっかりと力強く握られていた。



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