Tell me love
□第1話
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「オレに愛を教えてくれないか。」
街中で何となく目があってしまったその男性は、
突然私にそう告げた。
その男性は細身で背が高く、俗に言うモデル体型だった。
吸い込まれそうな大きな黒目に、艶を持ったさらさらとした黒髪。
第一印象は、“綺麗な人”であった。
あまり男性に使う言葉ではないかもしれないが、その人には綺麗とか美麗とかが本当に似合っていた。
「えと、ど、どういうことですか」
「言葉の通りだ。」
見ず知らずの人に、突然「愛を教えてくれ」なんて言われても、ハイと頷けるわけもなく、誤魔化して立ち去ろうとした。
「…逃がすつもりはない。」
しかし、腕を引っ張られ、身動きがとれなくなる。
「ちょっと…!何なんですか!?警察呼びますよ!?」
「呼べるもんなら、な。」
その瞬間、衝撃が加わり、私の意識はとんだ。
「団長ー…この子どうしたの?」
「…拾った。」
「もしかしてあれ?前に言ってた愛がなんたらってやつ…」
ぼんやりと聞こえてくる会話に、目を覚ます。
「う……ここ、どこ…」
「あ、団長。この子目が覚めたみたい。」
視界に映ったのは、黄緑っぽい色の髪の毛の青年。
目がくりっとしていて、可愛い顔をしていた。
「気分はどうだ。名無し」
次に映ったのは、さっきの男性。相変わらず綺麗だ。
「…って、なんで私の名前…っ」
驚き、起き上がると軽く頭痛がした。
「まだ動いちゃダメだよ、アンタ。」
次に現れたのは、ピンク色の髪を束ねた可愛い女の子。
次々と現れる知らない人と、この状況。
全くもってわけがわからなかった。
「名無し、さっき言ったことは覚えているか?」
「愛を…教えろ…?」
質問に答えると、その男は少し口角を上げた。
「そうだ。言っておくが、抵抗したり逃げたりしたら消させてもらう。」
「…え?」
消す…とはどういうことか。
私は、従わなければ殺される…ということなのか。
何故、知らない人に愛を教えろと言われた挙げ句、気絶させられ訳のわからない所へ連れてこられ、その上に抵抗すれば殺すと言われなきゃいけないのか。
理不尽さに怒りをおぼえて睨むが、男はそれを無視して続けた。
「オレのは団長の、クロロ=ルシルフルだ。ここは幻影旅団のアジト。」
「幻影旅団…?団長?」
「簡単に言えば盗賊団。窃盗と殺人が主な活動。…稀に慈善事業もする。そしてAクラスの賞金首だ。一般人には団員の名前も顔も知られてはいない。」
全身から血の気が退くのを感じた。
「つまりお前に知られてしまったからには、生きて逃がさないということだ。」
そこまで聞いて、一気に顔が青ざめた。
「お前の表情、見てて飽きないな。」
その男─…クロロ=ルシルフルは、クックッと喉を鳴らして笑った。
「そんなに恐れなくても良い。抵抗しなきゃ殺したりしない。」
まず、殺すという選択肢があることが怖いのだが…
とにかく、私はこの幻影旅団団長の言うことを聞く他無かったのだ。
しかし、いくつか問題が浮上した。
「あの…ルシルフルさん…」
「クロロで良い。」
「……クロロ、さん。」
「…何だ。」
「愛を教えるって、どうすれば…」
「知らん。」
勇気を出して質問したというのに、あっけなく返される。
「知らんって…」
「文明を知らない人間に、“文明ってなんですか”とお前は聞くのか?」
顔色を変えずに鋭く言われ、思わず謝罪する。
「とりあえず今日は休め。パク、頼んだ。」
「了解。」
パク、と呼ばれた女性が私を手招きする。
「まだ少しふらつくでしょ。ゆっくりでいいわ。」
彼女は微笑みながらそう告げた。
少しもつれる足で、彼女についていくと、ドアの前に案内された。