Book 1(短編)

□甘えたい日
1ページ/4ページ


〈理佐〉



今日は歌番組の収録の日。
メンバーは衣装に着替えて、お化粧もばっちりで待機中。



「理佐〜、まだ一時間くらいかかるらしいよ」

「セットチェンジって大変だよね」

「本当だね。

そういえば羽琉、まだ来ないね」

「雑誌の撮影があるらしいよ。遅れてくるって言ってた」

「流石、彼女!羽琉のスケジュール完璧に把握してるじゃん」

「愛佳、うるさい」



愛佳と喋っていると、楽屋の扉が開いた。



『やばい…誰か、バスタオル取って』

「羽琉、めっちゃ濡れてるじゃん」

『駅からここまで歩いてたら雨降ってきて…
走ったけど濡れた

あ、友香ありがとう』

「てか、イケメンすぎだわ」

『愛佳、何?』

「だから、イケメンだっていってんの!雨に濡れてイケメン度倍増してる!」

『意味わかんね』



そう言うと羽琉は着替えを済ませて髪の毛を乾かしにいった。


私が付き合ってる橘羽琉はかなりクールだ。
一匹オオカミで、メンバーにべたべたしている所なんて見たことない。
1人の時間が好きで、待ち時間は大抵音楽を聞いて過ごしている。
だけど、周りのことをよく見ていて、本当に困ってるメンバーに手を差し伸べる優しいところもある。
だからか、みんな羽琉をすごい慕っている。



『はぁ…なんか今日、めっちゃ疲れた』

「お疲れ様。雨すごかったみたいだね」

『うん。タイミング悪かった』



羽琉はそう言うと、私の肩に頭を預けてきた。
珍しいからか、周りのメンバーも少しざわざしている。
人前で絶対べたべたしたくない羽琉。
なのに、今日はどうしたんだろう



「もしかして、体調悪い?」

『うーうん。全然元気』

「ならいいけど…
羽琉からくっついてくるの珍しいなって思って」

『嫌?』

「嫌じゃないけど」

『恥ずかしい?』

「うん…みんな見てるし」

『そっか』



そう言うと、私の肩から離れていってしまった。
離れられるとなんだか寂しい…
羽琉は横で目を擦ってる。
そして、周りをきょろきょろ。



『空いてる布団がない』

「美愉とか、寝てるしね」

『眠い』

「うん、眠そう(笑)」

『ねぇ、理佐』

「何?」

『膝枕して』

「えっ!」

『駄目なの?』



愛佳と織田が私たちの会話を聞いてニヤニヤしている。
最悪…



「羽琉、」

『だめって言ってもしてもらうから』



そう言うと、私の膝上に頭を乗せ、腰に手を回しぎゅーっと抱きついてきた。
…2人っきりでもこんなことあんまり無いんだけど…



『理佐、収録前に起こして。
おやすみ』

「うん、」



おやすみって言うと、すぐに寝息が聞こえてきた。
よっぽど疲れてたんだろうなぁ…
まだ、髪の毛湿ってる。
ちゃんと乾かせてないじゃん。
羽琉の短い髪の毛を撫でる。
寝顔可愛いな。



「らぶらぶですなぁー」

「理佐、なに羽琉の寝顔見て愛おしいなぁって顔をしてるんですか。羽琉が起きてるときはツンツンなのに、寝てる時はデレデレですかー」



愛佳と織田…うざい。
20分ぐらいで羽琉は起きた。
寝ぼけているのか、私の顔を見て目を細めて笑っている。
そして、また私の腰に手を回しぎゅーっとして…



『理佐、いい匂いする

香水変えた?』

「…っ変えた」

『この匂い好き』

「うんっ」



羽琉は立ち上がったかと思うと、私の頭を少し強引に撫でて、ありがとうと言って飲み物を買いに行った。


顔と耳が熱い…
膝の上に顔を乗せてみんなに見えないようにする。



「理佐、照れてる(笑)」

「可愛い!」


愛佳と織田がまた冷やかしてきたけど相手をできる余裕もなく、聞こえないフリをした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ