Book 4(短編)

□どこかで…
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〈理佐〉



別に私たちは悪くない。
あいつらが喧嘩を売って来て、だから買っただけ。
なのに…卑怯だ。
私は愛佳と2人なのに、あいつらは…大人数でかかってきた。



「痛っ…、」

「最悪…」



公園で2人、体のいろんなところが痛くて…起き上がれずにいた。
近くを通りかかる大人は倒れている私たちを見て見ぬ振りをして通り過ぎていく。
大人なんて大っ嫌いだ。
もう疲れすぎて、意識も朦朧としてきた。
目を瞑ると、誰かに体を揺すられた。



『大丈夫?』

「…っ…、」

『ダメだな…連れて帰るか。
おーい、歩ける?』

「…うん、」

『こっちの子は…ダメか。』



声をかけてくれた人は、私たちと同じ制服を着ていて…胸に金色のバッチがついている。
…ってことは、生徒会か。
ネクタイの色を見ている限りでは、私たちのとは違うから先輩だろう。
その人は気を失っている愛佳をおぶり、私の腕を引いて歩き出した。
家はすぐ近くにあって、部屋に入ると愛佳をベッドに下ろした。



『…いつまで突っ立ってんの(笑)
座りなよ』

「…っ、」

『ちょっと待ってて』



その人は私の頭を優しく撫でると部屋を出て行った。
すぐ戻ってくると、手に持っていたのは救急箱。
私の前に座り、目をじーっと見てくる。



『自分は、橘羽瑠。


君は…渡邉理佐?』

「えっ…なんで、」

『やんちゃな一年が2人いるって生徒会で有名だよ』

「…っ、痛っ、」



羽瑠は私の顔の傷を消毒しながら話した。
眉間にシワがよってて…怒ってるのかな。



『…可愛い顔が台無し』

「…っ、可愛くないし、」

『喧嘩でも、なんでもしたらいいけどさ…
自分のこと大切にしろよー』

「生徒会なのに…こんなこと言っていいの?」

『ふふっ…今は学校じゃないから生徒会じゃないし。
一年多く生きてる先輩として言ってやってんだよ』



そういうと羽瑠はくすくす笑った。
この日から、愛佳と私は…学校でも羽瑠
と話すようになったんだ。


**********


『まーた、ここにいた』

愛佳「…きたきた」

「…また説教?」

『されたくないなら、授業出ろ』



昼からの授業は眠いし面倒くさいし出たくない。
毎日、毎日…こんな気分の時は屋上でサボっている。
羽瑠は来るなり、私と愛佳の頭をがしっと強引に撫でた。



『最近、悪さしてる噂流れてないけど…


ついに、落ち着いちゃった?』

「なんで、ちょっと残念そうなの?」

愛佳「ぶっ…変なの(笑)」

『いやー…
やるならさ、とことんやってほしいじゃん。


でも、まぁ…心配しなくてすむからいいや』

「…っ、」

愛佳「…っ、」

『次の授業は出ろよー』



羽瑠はそう言うと、手を振って屋上から出て行った。
羽瑠の後ろ姿を見て、愛佳と2人で吹き出すように笑う。



「ほんと…変わってるよね」

「本当変わってるよ。
普通気絶してる私を連れて帰る?(笑)」

「そうだよね(笑)


でも…なんか、お姉ちゃんっていうか…お兄ちゃんみたいでいっしょにいると安心するよね。」

「わかる、わかる!

でもさ…なんか、どこかで見たことあるような気がするんだよね…誰だっけ…」

「えっ…だれ?」

「んー…っ、わかんない」



見たことあるって…だれだろう。
2人でずっと考えたけど、全然思い出せなかった。


放課後…いつも通り、愛佳と2人繁華街を歩いていた。
人通りが少ない道があって、そこを通っていると足音が聞こえた。
しかも、この足音…1人じゃない。
たくさんいる。
愛佳と後ろを振り返ると前、喧嘩を売ってきた集団がいて…前よりももっと人数が増えていた。



「あ、こいつらです」

「…まじで?…思ってたよりも可愛いんだけど」



集団の中には男の人もいて…にやにやと気持ち悪い笑顔でこっちを見ている。
愛佳に目で合図を送る。
この人数相手は流石にやばい。
2人で逃げる道を探すようにキョロキョロしていると…360度、囲まれていることに気づく。



愛佳「…やばい、」

「前ら2人さ…俺らの女になるって言うなら逃がしてやるけど…どうする?」

「…なるわけないじゃん。ね、愛佳」

愛佳「お前らみたいなしょうもない男の女になるくらいなら…死んだ方がマシだよね、理佐」

「…、二度と口聞けなくしてやるからな」



諦めが肝心だ。
もう、病院送りだろうなぁ…そう覚悟を決めた時…いつも聞いている、安心する声が聞こえた。



『…相手2人なのに、こんな人数でやるの?だせー』

愛佳「えっ…なんで、」

「羽瑠…」

『…ギリギリセーフだな。
理佐、愛佳…あとでちゃんと話すから』



羽瑠はそう言うと、仲間とともに相手の集団を次々と倒していった。
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