Book 5(短編)
□背伸び
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〈羽瑠〉
「ぷっ…はははっ…」
『理佐、はやく』
「えーっと…くふっ、…157センチ…っ、」
『…伸びねー』
一週間に一度、保健室にお邪魔して身長を測っている。
にしても…18歳にもなると伸びないね。
今回、測ってくれた理佐はずっとくすくす笑っていて…笑顔は可愛いけど、なんかムカつく。
…こんなに必死になって身長伸ばそうと努力してるのには理由がある。
「私も測って」
『……165.7』
「変わらずだね」
『理佐と入れ替わりたい』
「変わってあげたい。
イケメンなのにさ…ちびって勿体ないもん…っ、」
また手を叩いて笑いだした理佐。
はぁ…ほんとこいつは。
教室に戻ろうと、まだ笑っている理佐は放って置いて保健室を出る。
後ろから“待ってよー”ってぱたぱた走ってくる理佐が可愛くて頬が緩みそうになるけど、我慢我慢。
理佐は追いつくと、自分の袖をきゅっと掴んで立ち止まった。
「…なんで、置いてくの」
『理佐がいつまでも笑ってるからだろ』
「だからって置いてかないでよ」
『はいはい、ごめんごめん』
「…、本当、適当」
理佐の頭を撫でて謝ると、唇を尖らせている。
そんな理佐を見て胸がきゅんっと音を立てた。
自分と理佐は高校生活の3年間、ずっと同じクラスだ。
愛佳と織田もずっと一緒で4人でずっと一緒にいて、ばかみたいなことばっかりしてたし大学に行ってもずっと仲良くいられるんだろうなって思った。
理佐のことも別に意識なんてしてなかったし、そう言う目で見てなかったし…
でも3年になって、たまたま席が連続で近くて…理佐を見ると、えっ可愛いじゃんってなって、えっ好きじゃんってなった。
いつも通り4人で弁当を食べていた時、好きなタイプの話になったんだけど…
愛佳「可愛かったら誰でもいい」
織田「ゆいぽん一択」
理佐「んー…私より背が高い人」
ここで自分の恋は敗れたみたいなもんで…
牛乳いっぱい飲んで見たり、カルシムとってみたり、小魚食べてみたり…いろいろ試したけど、全然身長は伸びなかった。
教室に帰ると、みんな席についている。
そうだ…昼から、球技大会の話し合いするっていってたような気がする。
友香が前に立っていろいろ話を進めてくれている。
今年はバレーとバスケか…
『え、もうメンバーにいれられてんの?』
友香「愛佳が教えてくれたんだよね。
羽瑠がバスケ部だったって」
『愛佳ー』
愛佳「いいじゃん…イケメンでバスケもうまい…
またファンが増えるだろうねぇ」
『そんなのどうでもいいよ』
勝手に決まっていたけど、まぁ仕方ない。
別に特別練習する気もなかったのに…茜がまぁ張り切っちゃって。
明日から昼練をすることになった。
理佐「ふふっ…羽瑠がバスケしてるところ見るの初めてかも」
『そんなに上手くないから見なくていいよ。
ていうか…昼練、だるすぎ』
茜「羽瑠ー!今なんて言ったー!」
『やば…理佐、行くぞ』
茜に捕まりたくなくて、リュックを背負い理佐のカバンを持って立ち上がる。
理佐はキョトンとしてて…理佐の手を繋いで教室から走って逃げる。
茜は後ろから追いかけてきたけど、足の速さには自信がある。
「ちょっと、…はやい、」
『理佐、急げ!軍曹くるぞ!』
繋がっている手にドキドキしたけど…理佐もギュって握ってくれてて嬉しかった。
うまく茜のことを巻くことができて、一安心。
『はぁはぁ…軍曹、めっちゃ速いわ』
「はぁ…、…っ、手、」
『…あぁ、ごめん』
「別に…いいけど」
繋いだ手を離すのを忘れていて、理佐に言われてパッと離す。
理佐はちょっと拗ねたような表情をしてて…でも、髪の毛の隙間から見えた耳が赤かった。