Book 2(短編)
□放ったらかし
1ページ/3ページ
〈由依〉
今日は地元で夏祭りがある。
付き合っている羽琉と一緒に行くことになっていて、今日までずっとワクワクしていた。
羽琉が由依の浴衣姿みたい!って言ってくれたからお母さんに着付けまでしてもらって、今待ち合わせ場所で待っている。
「羽琉、まだかなー…」
『由依、お待たせ。…っ、』
「待ってないよ。大丈夫」
『……っ、』
「羽琉…?」
『浴衣…可愛すぎ…、』
「…っ、ありがと」
羽琉は少し照れながら褒めてくれて…嬉しいけど、私まで恥ずかしくなってくる。
『今日の由依は可愛すぎるから…ナンパされないように、はい』
そう言って手を出す羽琉。
その手を掴むとぎゅっと握られて、そのまま歩き出す。
ふふっ…羽琉、耳が赤い。
私の歩くスピードに合わせて、ゆっくりと歩いてくれる。
こういう優しい所が大好きで…羽琉の手をぎゅっと握った。
手を繋いだまま屋台を見てまわる。
『由依、なに食べたい?欲しいのあったら言ってね』
「たこ焼き食べたい」
『よし、買いに行こう』
たこ焼きが売っている屋台につき、屋台のおじさんに注文している羽琉。
「隣にいる子は彼女か?可愛いね」
『はい。可愛いでしょ?あんまりじろじろ見ないでよ?(笑)』
「おー!らぶらぶだな!よし、おっちゃんがひとつサービスしてやろう!」
おじさんはそういうと、ひとつ多くたこ焼きを入れてくれた。
羽琉はありがとって伝えて嬉しそうに歩いている。
『由依のお陰で得したな』
「私のお陰じゃないよ」
『由依が可愛いからサービスしてくれたんじゃん』
そう言って私の頭を撫でてくれる。
私も嬉しくなって、にこっと笑顔を返すと…
遠くから、羽琉?って声が聞こえた。
「あれ?羽琉だ」
『あ、理佐。久しぶり』
「久しぶり。元気にしてんの?」
『してるよ。理佐は?』
「元気だよ。また3組メンバーで集まろうよ!」
『あ、いいね。茜とか呼んでさ、久しぶりに会ったらめっちゃ面白いだろうね』
話を聞いていると、どうやら中学の時の同級生らしい。
…めちゃくちゃ美人で可愛い人。
羽琉は同級生の子とずっと喋っている。
久しぶりに会ったから、嬉しいのはわかるんだけど…
ほったらかしにされて寂しい気持ちもある。
今日は楽しみにしていたお祭りデートなのに…
『由依、ごめん。行こっか』
「うーうん…もういいの?」
『うん。また遊ぶ約束した』
「そっか…」
そのまま、かき氷を食べたり、おみくじをしたり…夏祭りを思う存分楽しんだんだけど…さっきの羽琉と可愛い同級生の子の姿が頭から離れない。
こんなに自分が嫉妬する人だとは思わなかった。
それくらい、羽琉のことが好きなんだと思う。
家おいでよって誘われて、羽琉のお家まで来た。
お邪魔しますって言うと、誰も居ないからいいよって言う羽琉。
そのまま2人で羽琉の部屋へ向かう。
『祭り、人がいっぱいで疲れちゃったね』
「すごい人だったらよね」
『うん…』
「……」
『由依、…好き』
羽琉はそう言うと、私を抱きしめてキスをして来た。
キスがだんだん深くなっていく。
羽琉は、私の体を押し倒す。
その瞬間、またさっきの光景が頭をよぎって…
「…っ、やだっ…!」
『えっ…由依…?』
「…今日は帰る」
そのまま私は羽琉のお家を後にした。