Book 2(短編)

□放ったらかし
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〈由依〉



今日は地元で夏祭りがある。
付き合っている羽琉と一緒に行くことになっていて、今日までずっとワクワクしていた。
羽琉が由依の浴衣姿みたい!って言ってくれたからお母さんに着付けまでしてもらって、今待ち合わせ場所で待っている。



「羽琉、まだかなー…」

『由依、お待たせ。…っ、』

「待ってないよ。大丈夫」

『……っ、』

「羽琉…?」

『浴衣…可愛すぎ…、』

「…っ、ありがと」



羽琉は少し照れながら褒めてくれて…嬉しいけど、私まで恥ずかしくなってくる。



『今日の由依は可愛すぎるから…ナンパされないように、はい』



そう言って手を出す羽琉。
その手を掴むとぎゅっと握られて、そのまま歩き出す。
ふふっ…羽琉、耳が赤い。


私の歩くスピードに合わせて、ゆっくりと歩いてくれる。
こういう優しい所が大好きで…羽琉の手をぎゅっと握った。
手を繋いだまま屋台を見てまわる。



『由依、なに食べたい?欲しいのあったら言ってね』

「たこ焼き食べたい」

『よし、買いに行こう』



たこ焼きが売っている屋台につき、屋台のおじさんに注文している羽琉。



「隣にいる子は彼女か?可愛いね」

『はい。可愛いでしょ?あんまりじろじろ見ないでよ?(笑)』

「おー!らぶらぶだな!よし、おっちゃんがひとつサービスしてやろう!」



おじさんはそういうと、ひとつ多くたこ焼きを入れてくれた。
羽琉はありがとって伝えて嬉しそうに歩いている。



『由依のお陰で得したな』

「私のお陰じゃないよ」

『由依が可愛いからサービスしてくれたんじゃん』



そう言って私の頭を撫でてくれる。
私も嬉しくなって、にこっと笑顔を返すと…
遠くから、羽琉?って声が聞こえた。



「あれ?羽琉だ」

『あ、理佐。久しぶり』

「久しぶり。元気にしてんの?」

『してるよ。理佐は?』

「元気だよ。また3組メンバーで集まろうよ!」

『あ、いいね。茜とか呼んでさ、久しぶりに会ったらめっちゃ面白いだろうね』



話を聞いていると、どうやら中学の時の同級生らしい。
…めちゃくちゃ美人で可愛い人。
羽琉は同級生の子とずっと喋っている。
久しぶりに会ったから、嬉しいのはわかるんだけど…
ほったらかしにされて寂しい気持ちもある。
今日は楽しみにしていたお祭りデートなのに…



『由依、ごめん。行こっか』

「うーうん…もういいの?」

『うん。また遊ぶ約束した』

「そっか…」



そのまま、かき氷を食べたり、おみくじをしたり…夏祭りを思う存分楽しんだんだけど…さっきの羽琉と可愛い同級生の子の姿が頭から離れない。
こんなに自分が嫉妬する人だとは思わなかった。
それくらい、羽琉のことが好きなんだと思う。


家おいでよって誘われて、羽琉のお家まで来た。
お邪魔しますって言うと、誰も居ないからいいよって言う羽琉。
そのまま2人で羽琉の部屋へ向かう。



『祭り、人がいっぱいで疲れちゃったね』

「すごい人だったらよね」

『うん…』

「……」

『由依、…好き』



羽琉はそう言うと、私を抱きしめてキスをして来た。
キスがだんだん深くなっていく。
羽琉は、私の体を押し倒す。
その瞬間、またさっきの光景が頭をよぎって…



「…っ、やだっ…!」

『えっ…由依…?』

「…今日は帰る」



そのまま私は羽琉のお家を後にした。
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