Book 2(短編)
□好き=好き
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〈羽琉〉
自分が通っている高校には普通科、特別進学科、そして芸能科がある。
芸能科はいわゆる、俳優、アイドル、モデルの子が多い。
自分は偏差値そこそこの普通科に通っている。
芸能科の生徒は建物も別で出会うこともないって思ってたんだ。
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昼休み、飲み物を買おうと販売機に向かったんだけど、人がいっぱいだからちょっと離れた販売機まで歩いて行った。
飲みたかったジュースを買って、販売機の隣にあるベンチに座って飲む。
すると…自分のあとに販売機で飲み物を買おうとしていた人があれっ?って行ってスカートやブレザーのポケットに手をいれ何かを探している。
『…大丈夫ですか?』
「あ、その…財布忘れちゃって…」
『はい』
「いや、大丈夫です」
『いいから使ってください。』
「ありがとうございます…」
100円を手渡す。
これが自分と理佐の出会いだった。
その後も、そこの販売機でたまに会うようになって喋るようになって…理佐のことを好きになった。
絶対ふられると思って告白したんだけど、よろしくお願いしますって照れながら言われて、めちゃくちゃ嬉しかったのを覚えている。
理佐はモデルをしている。
今は、大人気の雑誌の専属モデルだ。
忙しくて学校に来ない日もあるけど、学校があるときは昼休みに2人っきりで弁当を食べたりもしている。
順調に付き合っていたんだけど…
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「羽琉ー!特進の人が呼んでるよ」
『今行く〜』
特別進学科の人が自分に用なんてないはずなのに…
一体何なんだろう。
その人と2人で誰もいない教室へと向かう。
中に入ると、その人は唐突に質問してきた。
「本当に渡邉理佐ちゃんと付き合ってんの?」
『あ、はい』
「本当だったんだ…」
『…?』
「理佐ちゃんに告白したらさ、付き合ってる人がいるからって言われたんだ。で、周りの人に聞いたらあんただって教えてくれたから。噂通り…大したことないね。理佐ちゃんと釣り合ってないわ」
『……』
釣り合ってないって影で言われていることはわかっていた。
わかってはいたけど、理佐への思いを止められなかった。
でも…もうそろそろ、自分の心も悲鳴をあげている。こうやって直接言われるなんて思ってもいなかった。
「理佐ちゃんの為にも別れてあげなよ。理佐ちゃんさ、せっかく美人で人気なのにあんたみたいなのと付き合ってたら株が落ちちゃうよ。それでもあんたはいいの?」
『……』
「まぁ、自分の身分を考えて行動しなよ?」
そう言って、その人は教室から出て行った。
理佐と自分が釣り合っていないことくらいわかっていた。
でも…言われた言葉がショックでその場から動けなくなってしまった。
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今日は学校に理佐が来ている日。
さっきの言われた言葉が頭をよぎって…いつもなら理佐に会える日はテンションが上がるんだけど、今は足取りが重い…
「羽琉。お待たせ」
『理佐…久しぶり』
「久しぶり。ごめんね?なかなか時間合わなくて…」
『うーうん、大丈夫だよ。理佐、髪の毛染めた?可愛いね』
「ありがと…、いつも褒めてくれるよね…?」
『何照れてんの(笑)理佐は可愛いなぁ』
「羽琉のばかっ…、大好き」
少し照れながら大好きっていってくれた理佐。
いつもなら自分も大好きって理佐に伝えているんだけど…今日は、笑って誤魔化すことしかできなかった。
学校も終わり、家に帰る。
自分の部屋に向かい、ベッドに寝転ぶ。
すると、理佐からLINEがあって…こんな衣装きたよって写真まで付いている。
写真の中の理佐は、おしゃれな服を着て、いつもと違う化粧、髪型…
手の届かない、遠い存在に感じたんだ。