Book 2(短編)
□風邪っぴき
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〈理佐〉
大学のサークルで出会った羽琉。
私は1年、羽琉は2年なんだけど、羽琉のコミュニケーション能力の高さのおかげですぐに心を開くことができた。
普段はクールなんだけど、私の前では意外とお茶目で…そこも可愛いなって思った。
飲み会や、デートなどを通して、羽琉の素敵なところを見るたびにドキドキして…好きだなって気付いた時、羽琉がちょっと照れながら好きなんだけど…って告白してくれた。
付き合ってから大きな喧嘩もなく仲良く過ごしている。
今では、サークルで冷やかされることも慣れたし、みんなの前でちょっとくらいなら手を繋いだり、腕を組んだりできるようになってきた。
昨日はサークルの飲み会。
羽琉は愛佳さんとハイペースで飲んでる。
「いやー、本当にかっこいいね」
「あかねん、人の恋人みてそれゆう?(笑)」
「だってかっこいいんだもん!理佐、いいなぁ…」
「…この頃さ、本当にいつか誰かに刺されるかもって思う時あるんだ…羽琉、モテすぎ。」
「そりゃモテるよ!クールなのに優しいし、おしゃれだし、イケメンだし…非の打ち所がないじゃん。」
「…意外と抜けてるところあるよ?」
「うわっ、理佐の彼女感!(笑)」
「ふふっ…いいでしょ?(笑)」
あかねんと二人でそんな話をしていると、愛佳さんが隣に座った。
「理佐。羽琉、さっきから変なんだよ。声も鼻声だし、目がぼーっとしてる。多分お酒のせいだけじゃないと思うんだよね。
しんどそうだし…あいつ、一人暮らしじゃん。連れて帰ってくれない?」
「わかりました。愛佳さん、ありがとうございます。」
羽琉の元へ向かう。
…本当だ。目がいつもと違う。
私が近づくと、微笑んでくれたんだけど…
『理佐、どうした?』
「…声、変だよ?」
『ん?そうかな…でも、なんか体熱いんだよね』
「…羽琉、熱あるよ。おでこ熱いもん。ちょっと早いけど帰ろう?今日、泊まるよ」
『1人で帰れる。うつすとだめだし…』
「こういう時は、素直に甘えてください。
荷物持って、帰ろう?」
『わかった』
羽琉と手を繋いで帰る。
手…やっぱり熱い。
家に帰って熱を測ると38.0℃…
「…朝から熱出てたでしょ?」
『…知らなかった』
「私、嘘つきは嫌いだよ?」
『…出てました。でも…久しぶりに飲み会だったから…理佐に言い寄ってくる奴いるし…』
やっぱりね…でも、理由は嬉しい。
普段はクールでもモテモテな羽琉も私の前では拗ねたり…色んな羽琉を見せてくれる。
「パジャマに着替えて、薬飲んで寝よう?」
『……』
「ぷっ…薬、嫌なんでしょ?(笑)」
『嫌っていうか…家にある薬、錠剤じゃん…』
「飲めないの?」
『うん…』
…ギャップ過ぎる。
しゅんってしている羽琉をみていると、胸がきゅんってなって…
何でもしてあげたいなって思う。
錠剤をすりつぶし、粉薬にする。
それを持って羽琉の所にいると…
「粉にしてきたよ。はい、飲んで」
『…苦いの嫌い』
「もぅ…頑張ったらご褒美あげるよ?」
『ご褒美…?』
「うん。頑張れる?」
『うん、頑張る』
目をキラキラさせて頑張るって言った羽琉。
本当に可愛い。
ぐっと我慢して薬を飲むと、苦い〜って言っている。
「えらいね。ちゃんと飲めたじゃん」
『ご褒美は?』
「ふふっ…何がいい?」
『…キスしてほしい』
「…っ、」
さっきまで拗ねてたのに、今は熱い眼差しで私を見ている。
少し恥ずかしいけど、羽琉の頬に手を当て、唇を重ねた。