Book 2(短編)

□無理しすぎ
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〈羽琉〉



大好きな人が待っているマンションへと帰る。
彼女のことは大好きだし、一緒に暮らすようになって、一緒にいる時間が増えて、本当に幸せなんだけど…
ひとつ、どうしても耐えられない事がある。



『理佐ー、ただいま』

「おかえり」



にっこり笑っておかえりって言ってくれている彼女は最高に可愛い。
自分が付き合っている理佐はツンデレだけど優しいし、なにより可愛いし、そして…料理がめちゃくちゃ上手。
毎日、手の込んだ料理を作ってくれるんだけど…



「羽琉。今日の夜ご飯も自信作だよ」

『…そっか、楽しみだな』



机の上に並べられている料理をみると、ピーマンの肉詰めに煮物、サラダ…
うん、めっちゃくちゃ美味しそう。
おいしそうなんだけど…



『…いただきます』

「…どうかな?」

『うん、めっちゃ美味しい。毎日ありがとね』



目の前には不安そうな顔の理佐。
美味しいって伝えると、目を細めて笑ってくれる。


…実は、自分はめちゃくちゃ好き嫌いが激しい。
野菜なんて食べられるものの方が少ないし、ピーマンなんて、小さい頃から全然食べられなかった。
理佐が一生懸命作ってくれるから、苦手なんて言えなくて…正直、このご飯の時間が唯一の理佐との苦痛な時間になっている。
よし、あとは気合で食べきるだけだ。


**********


『愛佳、織田、今日もご飯行ける?』

愛佳「いいけど…りっちゃんは?」

『…たまにはいいでしょ。ちゃんと連絡入れるし。』

愛佳「たまにじゃないじゃん。最近多いよ」

織田「なに、もう倦怠期?」

『そんなんじゃねーよ。らぶらぶだっつーの』



理佐とのご飯の時間がきつくなっていて…大学で仲のいい愛佳や織田とご飯に行く日が続いていた。
今日の夜は焼肉。
久しぶりの大好物。めっちゃ嬉しいなぁ…



『最高!やっぱ肉だな。マジでうまい』

愛佳「…羽琉。ちゃんと理佐に連絡した?」

『したって』

織田「…まじで最近どうした?理佐と何かあった?」

『……』

愛佳「羽琉…?」

『もう、耐えられないんだ…』

織田「えっ、何が、」



そう…もう耐えられない。
理佐の気持ちは嬉しいんだけど…苦痛で苦痛で…



『理佐の手料理が耐えられない…』

愛佳「えっ、理佐って料理上手なイメージあったけど、」

『うん。めちゃくちゃ上手だと思う』

織田「じゃあ、何で?」

『自分さ、野菜全般嫌いでしょ?もはや魚も食べないじゃん。肉が好きで肉しか食べたくないってくらいライオンみたいな体なんだよ』

愛佳「ライオンって…(笑)」

織田「例えが変だわ(笑)」

『理佐はさ、栄養バランスとか考えてくれて…でも、一生懸命作ってくれるから食べないとってプレッシャーで…理佐に好き嫌い激しいことも伝えれてなくて…無理に食べてるからもう我慢できない…』

織田「幸せな悩みだね」

愛佳「本当にね」

『こっちは真剣に悩んでんのに…』

愛佳「まぁ、私たちはご飯行くくらい全然いいし、もはや喋れて楽しいけどさ。理佐のこと考えるとずっとって訳には行かないでしょ。ちゃんと本当のこと言った方がいいよ」

『んー…』

織田「なに?まだ何かあんの?」

『本当のこといったら理佐、悲しいよね。今までの美味しいって嘘だったんだって思うじゃん…』

織田「確かに…」

愛佳「…あー!ややこしいな!もう、一生無理して野菜食えよ!可愛い理佐が作ったんだぞ!」

『理佐が可愛いことくらいわかってんだよ!それでも食えないの!』

愛佳「うるせー!こそっと惚気るな!」

織田「2人ともうるさいから(笑)」



愛佳も織田も一緒に考えてくれている。
本当のことを言うのが1番いいってわかっているんだけど、理佐のことを傷つけたくなくて…
結局言えないまま時間だけが過ぎていった。
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