Book 3 (短編)
□ALONE
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〈理佐〉
欅が結成して2年。
ずっと気になっているメンバーがいる。
年齢は私と一緒の19歳。
身長は私より高くて、髪の毛はショートで黒髪、顔は爽やかでイケメン。
なのに…全然笑わなくて無愛想。
だれにも心を開かない、橘羽瑠。
ふーちゃんとか、織田とか、めげずに声をかけ続けているけど心を開く様子はない。
正直…メンバーの中でかなり浮いていると思う。
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今日はダンスレッスンの日。
1ヶ月後のライブに向けて、新しい振りをどんどんおろしている。
今は、坂道AKBの曲のダンスを練習してるんだけど、まさかの隣のポジションが羽瑠で…確かに、めちゃくちゃダンス上手だし、覚えるのも早いし…
「……」
『…なに』
「…、ダンス上手だなって思って」
『…ありがと』
隣の羽瑠をじーっと見ていると目があって、思っていることを伝えると目を細めて笑ってありがとうって言ってくれた。
羽瑠の笑顔に、胸の奥のなにかが掴まれたようで…胸が一瞬苦しくなる。
1日のダンスレッスンが終わり、みんなは着替えとか、帰る準備とか済ませると早く帰ろー!!って声を掛け合っている。
ふと、羽瑠を見るとレッスン着のままリュックを枕に寝ちゃってる。
「理佐、帰ろう」
「愛佳…ごめん。先帰ってて、予定があって」
「わかった。また、明日ね」
「うん、お疲れ様」
愛佳や他のメンバーに手を振り、ばいばいって声をかける。みんな、帰ってしまって、ここには私と羽瑠だけになってしまった。
少し近づいて、寝顔を見る。
「ふふっ…子どもみたい」
寝顔はまだまだ幼くて…もっと愛想よくすればいいのに。絶対このルックスだったら人気者だよ。なんで、自分から関わろうとしないんだろう。なんで…孤独を選ぶのかな。
レッスンの疲れからか、私も眠たくなってきて…少しぐらいならいいかと思い、羽瑠の横で眠った。
『…起きて』
「んっ、…」
『…帰ろう』
「まだ、ご飯食べてないっ、」
『ぷっ…ははは!寝ぼけてんの?(笑)』
目を覚ますと、目の前には今まで見たことないくらい笑っている羽瑠。
面白すぎって大爆笑してる。
「えっ、私何かした!?」
『起こしたらさ…ぷっ…ははは!(笑)』
「えっ、なに!?」
『夢の中で、美味しいものでも食べてたの?…っ…、』
「ちょっと、笑いすぎ」
『…っ…、腹いてぇー…』
えっ…私なにしたの…
めちゃくちゃ笑ってるじゃん。
てかさ…
「…笑えるじゃん」
『ん?』
「絶対、笑顔がいい」
『なんで?』
「えっ、」
『…なんもない。寝てたから、待っててくれたんだよね。ありがとう』
羽瑠はそう言うと、荷物を持って歩きだした。私もその背中を追った。
スタジオから出ると、冷たい風が吹いていて…秋だからってなめてたな…パーカー持ってきたらよかった。しかも…なかなかタクシーが捕まらない。
『……無理だね。歩いて帰るか』
「そうだね」
『…これ、はい』
羽瑠が不器用に手渡してきたのはパーカー。使ってないやつだからって言って、強引な感じで私の肩にかけた。
「えっ…羽瑠、寒くないの?」
『大丈夫』
「…ありがとう」
『どういたしまして』
羽瑠がまた目を細めて笑った…ような気がした。前をみてたから、ちゃんと見えなかったけど、一瞬…目尻が下がってたんだ。胸がキュンてする…これって…