ボル版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
□君を守るのは
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とても天気のいい日だった。
カーテンと窓を開け、ぐっと伸びをすると、爽やかな秋の風が部屋に舞い込んでくる。
少し休憩をするつもりで窓から見えるたくさんの花を眺めていると、コンコン、と扉がノックされた。
「あっ、はい!」
返事をしてドアを開けると、私の大好きな…優しい声が耳に届く。
「やあ…調子はどう?僕のプリンセス」
「エド…!どうしたんですか?」
「君の顔が見たくなってしまってね…君さえ良ければ、薔薇園で一緒にお茶でもどうかな?」
ふわりと微笑んだエドの言葉に、私もついつられて笑顔になってしまうのを感じていた。
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「もう…ドアを開けたらエドがいるから、びっくりしちゃいました」
「ドッキリ大成功、だね?」
「ふふ、そうですね」
悪戯っぽく言うエドと並んで廊下を歩いていたその時。
曲がり角を曲がった私の目の前に、ふと何かが現れた。
「え…きゃっ…!」
ドンっという衝撃に、何が起こったのか考える暇もなく体がバランスを崩す。
ぎゅっと目をつぶったが体は倒れることなく、腕を掴まれてなんとか体勢を整えることができた。
「ごめん、気付かなかった…大丈夫?」
息をついたのも束の間、穏やかなその声にハッと顔を上げると、そこにいたのは…
「ウィル王子!」
「ぶつかってすまない、窓の外を見てぼーっとしていた…」
「い、いえ…大丈夫です」
突然のことに驚いた私は、そっと隣のエドを見上げる。
すると、エドも驚いた様子でウィル王子に声をかけた。
「ウィル王子…来られるのは夕方だと聞いていたのですが…」
「ああ、君に少し相談したいことがあって……少し早めに来たんだが、思った以上に早く着いてしまって」
申し訳なさそうに言うウィル王子に、エドはすぐに笑顔を見せる。
「いえ、構いませんよ…執務室へご案内します」
「ああ…助かるよ」
どうぞ、とウィル王子を促しつつ、エドはそっと私に呟いた。
「すまない、予定が入ってしまったから…」
「私は大丈夫です、お仕事…頑張ってくださいね」
少し残念な気持ちを押し込んで答えると、エドは静かに微笑んで、ウィル王子と共に執務室へと去っていった。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
気付けば、夕日が辺りを染める時間になっていた。
(結局、エドとは少しの時間しか話せなかったな…)
それほど急ぎではない仕事に手をつけ時間を潰していたが、それもそろそろ限界だ。
(…気分転換に、薔薇園に行ってみようかな…)
そう思いついた私は一人、部屋を出て庭の方へ向かった。
「夕方はまた一段と薔薇が綺麗…」
夕焼けに染まった薔薇に囲まれ、ゆっくりと歩いていく。
(エドと一緒に、見たかったな…)
また湧き上がる気持ちをぐっと堪えて、うつむき加減に歩いていたその時。
ふっと目の前が陰り、次の瞬間、どんっと何かにぶつかってしまった。
「きゃ…」
「おっと」
ぐっと支えられた、背中に回った大きな手とふわりと漂う大好きな香りに顔を上げると…
「…元気がないね…妖精さん?」
夕日に美しく照らされて、エドが笑っていた。
「エド…っ」
名前を呼ぶのと同時に、そのまま優しく抱きしめられる。
「…良かった、今度はちゃんと僕が守れて…」
「え…?」
不思議そうに見上げた私に、
「ウィル王子とぶつかった君を支えられなくて、ずっとモヤモヤしてたんだ…」
そう言ってエドは穏やかに笑ってみせた。
fin