【ヒロアカ】先 輩 依 存 症 。

□▽プロローグ
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「葵」

名前を呼ばれる。

ベランダから外の景色を眺めていた少年は(くわ)えていた煙草を指に挟み、灰色の煙をゆっくりと宙に吐き出す。


「なにしてんの」

「…別に」


少年は(ふち)に濃いピンクを彩った黒のボクサータイプの下着と、ぶかぶかな黒のタンクトップに白い上着を羽織っていた。

だらしなく露出している肩や首には、所々に歯形やキスマークが散らばっている。

死柄木 弔は開けたベランダの大きな窓に寄り掛かりながら、億劫(おっくう)そうに応える少年の背中を見据える。


少年の視線は、宙に注がれたままだ。


心地良く吹き抜ける風が、吐き出された煙を揺らす。


とある月曜日の朝方。

藤井 葵と死柄木 弔は白を基調としたホテルの一室にいた。


外出仕様なのか、いつもと違い身体中の手≠装着せず、黒いパーカーに身を包んでいる死柄木は黒のフードを深く被り直す。


「飛び降りる時は言えよ」


振り返らない葵は、その言葉に一瞬動きを止めた。

そして、くるりと顔を死柄木に向ける。

「…なんで?」

少年の薄い色素の髪が風を(はら)む。


「見たいから」


ぞっとするような笑みを浮かべて躊躇(ちゅうちょ)なく言い放つ死柄木を、少年は一瞥(いちべつ)する。

「ばっかじゃねーの」

少年はそう言って、再び煙草を咥えた。


少し遠くから線路の上を走る電車の音が聞こえる。


朝のひんやりとした空気が肌を撫でた。


死柄木の手が、葵の顎を掴み上を向かせる。


葵はそれを受け入れるように、死柄木の首に腕を回し、唇を合わせた。
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