小説

□夢幻泡影月ノ夜
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「あっ…え、?」


あーりんとももかの驚く声が、階段に響く
そこには、だれもいなかった


「…ねぇ、なにがあったの?」

れにを見れば反応がなくて
あーりんとももかはスタッフさんに確認しに行くといって走り出した
どうなってるの、一体



「ねぇ、夏菜子ちゃん」
「…ん?」
「私たち、何をしてたんだっけ、」
「……え?」

困惑した表情で、私を見るれに
誰かが階段から落ちたんでしょ、でも誰もいないんでしょ
跡形もないんでしょ、あんなに焦ってたじゃない
そう思っても、私の口は思うように動かなくて


「わかんない、」





その場にいても全然誰も来なかったので、楽屋に戻ることにした
楽屋のドアを開ければ、あーりんとももかがいた

「えっ、二人ともどうして…」
「ん、どうしてって…」
「あーりんそろそろ帰らなきゃって、思って…?」


三人とも、さっきまであんなに焦っていたのに
あんなに、驚いて、動揺して
もう本当どうなってるの


「じゃぁお疲れさま、…大丈夫?なんか疲れてるんじゃない?」
「うん…ちゃんと休んでね、」
「…うん、」

ドアが閉まって、少ししたられにもいつも通り帰って行って
残された荷物は私のだけ、なんだか急に寂しさが襲う

なんで、誰もいないからかな、みんな帰ったから仕方ないじゃない
かばんに持ち物を詰めて、コートを着て、ポケットに手を入れて


くしゃっと、何かが手に触れた



『たすけて』


何処かで見たその文字が
走り出しそうに並んでいた
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