小説

□おなかがすいた
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大きくなるまで絶対、私が絶対離れないからね

ずっと、みててあげるからね



そういって頭を撫でてくれたあなたは

もう









雨が降ってる。ごくりと唾を飲む
ずっとこの部屋に閉じ込められている
決して誰かにとか、そうじゃなくて。そうとも言えるんだけど、そうじゃなくて
出ようと思えば出れるんだけど、きっと私はずっとこのままいる
あなたが来てくれるまで、もういいよってなるまで

ずっとあなたは来ないんだ、少し前に喧嘩しちゃって
きっと悪いのは私なんだ、だってわがまま言っちゃったんだもん
機嫌が悪いときに言ってしまったわがまま
許されなかったわがまま
だから、あなたと過ごした部屋に一人きりで、それが罪滅ぼしになるかは知れないけど
私は多分ずっと、ここにいるんだな

最近は食欲に負けないように頑張ってるんだ
これは罪滅ぼしなんかじゃないよ、待ってるんだもん
あなたにやさしさを分けてもらうのを、甘えてるよね
来ないのならば、このまま消えたって、いいと思ってるわけだし

こうして自問自答を繰り返して、終わりのない雨を眺めながらずうっと暇を持て余している訳なんだけど
私には、みんなが持っている何かが足りないんだろうなって思って
何かはわからないよ、それが何かは
本当は分かっていたとしても、分からないよ、私には、きっと



あぁ、喉乾いたなぁ

もうこうしているのも、もう飽きてしまったんだけれど

私のせいかもしれないけれど、こんな風になることはないはずなんだけどなぁ

あなたは一体、何をしているんだろう


まだ、帰ってこないかな









雨に食欲をそそられるっておかしいじゃない、って

そうだね、おかしいのかもしれないね







「詩織…っ!」



遅いよ、もう
貴女はいつも待たせるんだから

離れないといいながら走るのが遅くて
みててあげるといいながら、実はもろくてやわらかくて

渇いた喉からは、声も出ないんだ
ごめんねって、どれだけ思っても

わかってね



口に注がれた柔らかい味は
大好きな味だったことだけは、分かってるよ


ダイスキ、だよ


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