忍たま乱太郎

□お団子の甘い夢 前編
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アニメ忍たま乱太郎の世界にトリップしてしまった音根は、忍術学園で世話になることになった。

最初は、話したところでトリップなど信じてもらえないと思っていた音根だったが、一年は組の良い子達と、その担任である土井 半助、そして六年生達だけは信じてくれた。

普通なら、くの一の長屋で暮らすことになるのだが、音根は学園長に頼み、忍たま達と共に生活をすることを許可され部屋が用意されたのだ。


それから数日が経ったある日、音根が中庭で木に寄り掛かり空を見上げていると、誰かがこちらへと近づいて来る足跡が聞こえてくる。

現れたのは、六年ろ組・中在家(なかざいけ) 長次(ちょうじ)、同じくろ組・七松(ななまつ) 小平太(こへいた)

六年は組・善法寺(ぜんぽうじ) 伊作(いさく)、同じくは組・食満(けま) 留三郎(とめさぶろう)

六年い組・潮江(しおえ) 文次郎(もんじろう)、最後に同じくい組・立花(たちばな) 仙蔵(せんぞう)だ。

皆、装束から着替えており、どうやら何処かへ出掛けるようだ。



「皆お出掛け?」



声をかけると六年生達は立ち止まり、音根へと視線を向ける。



「休日ですから、皆各々の行きたいところに出掛けるところなんです」



そう答えてくれたのは、伊作だった。

鍛練をしに行く者、町の団子屋へ行く者と別れているらしく、音根は両方から誘われてしまう。

どうしたものかと困っている音根を助けたのは、町へ行くという仙蔵と伊作だった。



「風明さんは鍛練ができないのだから、連れていっても退屈なだけだろう」

「そうだよ。それに4人とも、風明さんに見られながら鍛練なんてできるの?」



音根を鍛練に連れていくことを脳内で考えると、4人は頬を染め、そうだなと頷く。

どうやら納得したらしく、音根は伊作と仙蔵の二人と町の団子屋へと向かうことになった。



「二人とも、さっきはありがとうね」

「気にしないでください」

「そうですよ。風明さんにあの四人と鍛練をさせるわけにはいきませんから」



音根を間に挟む形で歩き団子屋まで来ると、外の長椅子に三人座る。

もうすぐ春ということもあり、お昼を過ぎた今はポカポカと暖かく、団子を食べながらお茶をすする。



「このお団子美味しい!」

「そうですね」

「今人気のお店だけあるね」



そんなほのぼのとした中、伊作の不運が発動し、その不運は何故か音根にふりかかった。

伊作が持っていたお茶が手から滑り落ち、隣にいた音根の膝の上に落ちてしまったのだ。



「あっ!!す、すみません!!火傷はしてませんか!?」

「大丈夫、もう冷めてたから気にしないで」



慌てる伊作だが、仙蔵は取り出した手拭いを音根の着物に押し当てる。

だが、それだけで取れるはずもなく、直ぐに着物を着替えないといけないため、三人忍術学園へと戻ることになった。



「あの、伊作くん。気にしないでね」



落ち込んでしまった伊作に声をかけると、ありがとうございますとぎこちない笑みが向けられる。

忍術学園に戻った後も伊作の元気はなく、音根は着物を着替えると、伊作の部屋へと向かう。

あの様子では、きっと気にしてるに違いないと思ったため、気になり様子を見に来たのだ。



「伊作くん、いる?」



戸の前で声をかけるが中からは返事がなく、人がいる気配もない。

どうやら何処かに出掛けているようだ。

仕方なく部屋に戻ろうとすると、音根の名を呼ぶ声に振り向く。
するとそこには仙蔵の姿があり、音根は仙蔵の部屋へと呼ばれた。



「伊作のことですか?」

「うん……」



仙蔵と同室の文次郎はまだ鍛練らしく帰ってきておらず、二人だけの空間で先程の話になる。



「気にしないでください、と言っても無理でしょうね。でも、今回の伊作は不運ではなかったようですね」



仙蔵の言葉に首を傾げると、風明さんにこんなに心配してもらえるんですから、と笑みを向けられ、音根の頬は熱くなる。

仙蔵は音根へと近づき顔を寄せると、今は不運だったようですが、と言葉を続ける。



「出掛けていたせいで、風明さんと二人きりになる機会を逃したんですからね」



ニヤリと笑みを浮かべる仙蔵の顔がゆっくりと近づき、あと数センチで唇が触れそうになったその時、廊下から足音が近づいてくる。

その音で、スッと仙蔵が音根から離れると、戸の向こうから伊作の声が聞こえる。



「仙蔵、いるかい?」



仙蔵が返事をすると、戸が開かれ伊作が中へと入ってくる。



「相談があるんだけど、風明さんのお詫びにと思って。これ、喜んでもらえると思うかな?って、風明さん!?」



伊作の手には沢山の花があり、その花を渡そうと思っていた人物がいたことに驚き、伊作は慌てて花を背に隠す。

音根は立ち上がると伊作へと近づき、背に隠された花へと視線を向けると、そのお花、私に、と首を傾げる。

伊作は頷くと、背に隠した花をおずおずと音根の前に差し出す。



「着物を汚してしまったので、そのお詫びにと思ったんですけど。こんな花じゃお詫びになりませんよね」



苦笑いを浮かべながら引っ込めようとする手を音根は包み込むと、伊作の手から花を受け取り、そんなことないよと、花に負けないくらい明るい笑顔で言う。



「こんなに沢山のお花よく見つかったね」

「前に乱太郎と薬草摘みに行ったときに、沢山花が咲いている場所を見つけたんです」



そんな会話が交わされる中、一人楽しくなさそうにムッと二人を見つめる仙蔵の姿があった。



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